あなたside
やった、触れた。
人の手が怖くない
気持ち悪くない。
あの恐怖は克服した?
大丈夫、もうこの人のことは怖くない。
怯えなくていい。
私はあの時みたいに一人じゃないから。
私の前に立つ木葉さん。
あぁ、前もこんな風に守ってもらったな。
木葉さんは、私の手を握る。
安心する温かさ。
手を握り返し、隣に立つ。
私だって誰かを守りたい。
ルルの彼氏が俺だからか、先生は説明をしてくれた。
その話は信じ難いものだった。
・
あなたは何も悪くなくて、、
ルルがあなたをイジメてた……?
ルルの言葉は嘘で、あなたが本当のことを言ってた。
いじめの内容までは教えてくれなかったが、
警察まで来ているんだ、相当な内容なのだろうと予想はできた。
部活の時間になってもルルは帰ってこなくて
部員のみんなが俺に声をかけた。
あなたの想いは知ってた。
知ってて突き放した。
最低だ……。
木葉さんは俺の胸ぐらを掴む。
そのまま、ルルは警察に連行されていった。
やるせない気持ちでバレーを取り組んでいく。
いつもみたいな明るい声が聞こえなくて、ミスが増えて数ヶ月経っていった。
想いの拒絶、か。
分かってたけど、直接聞くのはキッついなぁ笑
だから謝罪の言葉も今は要らなかったんだけどなぁ。
別に嘘は言ってない。
ルルは私を殺そうとするはずだ。
これで他に危害が及ばない。
ルルside
何を終わりにするの。ヤダよ……
あの頃のあなたも京治も誰も気づいてなかった。
でも、ルルは気づいてしまった。
あなたの京治への想いと
少しずつ京治があなたに惹かれていってることを。
この時覚えた
あなたへの激しい嫉妬、殺意。
ずっと側にいてよ……!独りにしないでよ……
ナンデ。
何モ上手くいかなイ。
京治は私から離れテいくし、
あノ時みタイに私ノ周りニは誰モいない。
ミンナ、向こう側だ。
ズルいズルいズルい……!!!!
ナンデあのおンナはミンナに囲まれていて
ルルの周りにはだレもイナい?
……京治を奪っタ、私ノ全てを奪ッた、
あのオンナは…あオい、あなただけは許サナイ。
でも、あなたを殺しても意味がナイ。
…だかラ
アイツの大切な奴を奪っテヤル。
ある人物へと一直線に走る。
ザクッ
刺す相手は違ったけど、結果良ければ全てよしだよネ?
木葉さんはずっとあなたのことを想っているんだね。
だカラ、殺そうとした。
あなたside
一瞬のことなのにスローモーションみたいに見えた。
私を刺したあの瞬間、ルルの顔が脳裏から離れない。
体育館の床の一部は、血が垂れて
ガシャンっとにナイフが床に落ちる。
説教でもするつもり?
やってもないのに、『できない』と決めつけんな。
あんたが罪を重ねて、喜ぶ人間なんていない。
『できない』じゃ更生なんて一生無理だ。
片手でルルを抱き寄せる。
一瞬だったけど、
あんな悲しい顔すんなら
更生できるから、絶対。
ルルは叩かれた頬を抑えている。
っ…大丈夫、もう少し我慢だよ。
人は誰しも弱いところがあるから。
手を取り合い生きてるんだよ。
愛も権利も全て。
そんなの簡単だよ。
昔のルルは一途で後輩にも優しかった。
本当のあんたは、きっと優しい。
…人に優しくできる人間だと思う。
感情に左右されることも分かる。
でも、人を傷つけたあんたは
自分も気づかないうちに傷ついてるだろ。
そんなの嫌じゃん。
だからさ今は……
手を握る。
あんたは独りじゃないから。
だから、、大丈夫。
ルルが警察の人と一緒に出ていく姿を見届ける。
……これで一件落着かな
ちょっと、ヤバいな……
目が霞んできた。
ここで死んだら…ルルが殺人犯になっちまうからなぁ
木葉さんたちにも借りがあるし……死ねねぇなぁ。
色んな人の声が聞こえる。
一番近い声…木葉さんかな。
こんなとこで死ぬわけねぇだろ。
だいじょーぶだって、、
今日はちょっと…疲れたな。
木葉side
お前の眠り方怖ぇんだよ…
神様頼むよ、あなたを死なせないでくれッ……
・
この後、すぐに救急隊員の人が駆けつけて
あなたは救急車へと運ばれた。
ピーポーピーポーと騒がしいサイレンを聞きながら、俺たちはその場に残った。
強制的に俺たちの合宿は幕を閉じた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。