第16話

なかよし
2
2025/12/01 09:00 更新
可愛いって言葉が大嫌い。
言っとけば良いんでしょ、みたいなその言葉が大嫌い。
どうしてこうなったんだっけ?もしかして、生まれた時からなのかもしれない。そしたら、改善のしようがないよね。
そもそも、私に愛嬌を振りまくのは難しいだろう。愛想笑いは苦手だし、思ったことがすぐに口から出るのだ。
正直言って、すごく態度も悪いし…表情が少しも変わらないし。
私が笑えるものって、どんなのだったかと考えてみれば、ノアが放った数々の…とても低俗で、下品な…とにかく、私と彼女以外が聞けば顔を顰めるであろうとびきり気持ちの悪い大変卑猥でクソみたいな発言だけだろう。
いや、言い過ぎた。アレはとても面白いものだよ。大抵の事は聞き流すネビルが俯きながら外に出て行くレベルの話だったらしいが。
まぁ、もういい、本題に戻ろう。私は可愛いって言葉が大嫌いだ。親に言われようが、とにかく誰が相手でも、言われただけで吐き気がする。
とはいえ、私は可愛いと軽率に言えるような雰囲気の人間ではないらしいから、なかなか言われることは無いんだけれど。
このクソみたいな口調が役に立つのは珍しいことだね。
…足音が聞こえる。これはノアか。
ノア
メイ~、お元気ですか~~。
やけに黒くて、黄色い目がたくさん付いたようなEGOに、やたらと眩しい青い髪の毛…あざとい人間の声を薄めたみたいな、気持ちの悪い声…案の定ノアだった。
メイソン
相変わらず引き延ばされた鼠みたいな声してんな。
ノア
何それ分からない、我が家は衛生管理をしっかりしていたので鼠が出たことはない。
ノア
あと引き延ばされた鼠が普通に分からない、なんなのそれは。
あり得ないくらい耳がキーンとするけど、こいつと話すのは嫌いじゃないからどうしたものか。
あぁ、いや、なんて言うんだろう…もういいや。
ノア
んま~、なんだろうね~…そうだぁ、メイ。
メイソン
何?早く言って。
ノア
……可愛いが嫌なら、ギリギリのラインを攻めてみようかと思うんだけど、どう。
ギリギリのライン、ねぇ…そんなものが存在してるように見えるなら、多分こいつの目は普通に悪い。
無い方がマシだと思うんだけど、どうなんだろうね。
メイソン
…馬鹿なの?
ノア
えっ、ひどい。まぁいいや、あのさぁ!昨日さぁ…。
メイソン
それは…まぁ、聞かせてもらうよ。
ノアの口から出る、あり得ないくらい気持ちの悪い話。ただ、私はそれが好きであった。
なんて言うんだろうか、良くない事を共有しているみたいで楽しい、って言ったらいいのだろうか。
とにかく、笑って話せる相手が出来ただけ、ありがたいものだ。
…というか、こいつ、どこからこんなクソみたいな話を持ってくるんだ?こんなに卑猥な事をするような奴は、この会社に居ないだろうに…。
もし居たらどうしような、今までよく隠し通した!ってことで逆に尊敬してしまうかもしれない。
メイソン
…お前、それ、どこから話持ってきてんだ?
ノア
あー……実家?もしくは実体験?
メイソン
うわ、心底軽蔑する。
ノア
ひど~い!もしこれが実体験だったら慰めてくれてもいいのにね!
メイソン
誰がするか。
酷いだなんて、思っても居ないだろうに。そもそも、嬉々として喋っている時点で…あー……いや…まぁ、どうなんだろうな。私はその類を経験したことがないから…いや、ソレ自体の経験はあれど、強行されたことは無いので、そこら辺はよく分からない。
別にネビルから聞き出しても良いけれど…わざわざ人のトラウマを引き出すようなことはその後が面倒だからやりたくない。ネビルがうっかり何か漏らしたら…どうせエレナあたりがキレるだろう。
エレナは大層キレやすい女だから、しょうがない節はあるが。
ノア
…へへっ、メイ、ご飯食べに行こう~!続きはそっちでね!
メイソン
食事中にする話じゃないだろうに。
右手を引っ張られる。悪い気はしないが、別にいい気もしない。
はぁ、今度は断ろう。こいつが変な話をするせいで私まで変な目で見られる…あぁ、その話で笑ってるからかな。
こいつの事は、こいつの話は別に嫌いじゃないから、一緒に居たって構わないが、そこら辺は弁えてほしいものだ。
ノア
休みが取れたら今度カードゲームでもしよう、ね?
メイソン
…トランプくらいなら準備しておいてやるよ。
ノア
へへっ、やったぁ。
…ミクシャみたいな顔で笑いやがって、気持ち悪い。
こういうところだけは、嫌いだなぁ。

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