夜。
寝付けない夜がやって来た。
最近夜は監視付きで外で風に当たっている。外にいる時はしんどさが幾分かマシになるから。
護衛の兵士には、毎晩連れ回してばかりで申し訳ない。
庭園らしき場所で見つけた長椅子に腰掛け、空を見上げた。
アルマ、ちゃんと生きているだろうか。
いや死んでいるとは思っちゃいないが、ハク達は行動を制限されているだろうから、あの子もあまり動き回れてはいないだろう。
体を壊さないでいて欲しい。
ふと、背後に人の気配を感じた。
護衛の兵士では無い。
一人……いや、二人か。
警戒心を高め、バッと後ろを振り返った。
私が突然振り返ったからか、驚いた表情を浮かべたスウォンの姿があった。
少し遠くにもう一人、居るねぇ。
背筋にビリッと走るくらい並々ならぬ気配。ただの衛兵じゃない。
流石、国王直属の護衛というところか。
一瞬、身体が強ばった。
その護衛にも、スウォンに対しても。
そう言って腰を上げると、スウォンはそれを止めた。
なんとなく、退こうとした私を引き留めようとしている気がした。
行かないで欲しい、というように。
……いいや、真逆。気の所為だね。
彼は1人分の間を空けて私の横に座った。
静かに吹く夜風が、二人の髪で遊んでいる。
その所為で、髪に隠れて今のスウォンの表情が読み取れなかった。
そう言う彼は少し笑みを零していた。
懐かしい。
その少しの笑みでさえ、愛していた記憶がある。
意外と取り乱すことなく話せている。
なんとかこのままの状態を保ちたい。
スウォンは私に目線を合わせ、こう聞いた。
その問いに、私は小さく目を見張った。
………其れを、貴方が聞いてしまうのか。
そんなの、理由は一つしかないだろ。
その一文だけで、聡い彼は全て察したようだ。
ギアロの一族が殺された発端は、当時の国王が緋̀龍̀王̀の̀一̀族̀の̀者̀に王座を奪われるのを恐れたから。
彼らが緋龍王の子孫でなければ、あのような悲劇は起こらなかったのかもしれない。
緋龍王の子孫でなければ。普通の人間であれば。
…………緋龍王が居なければ。
口に出したことはあまり無いが、ギアロが緋龍王を憎んでいるということは一緒に居て感じた。
そんな彼に、自分が五龍だと伝えたら。
でも、何より、
スウォンは口を挟むことは無かったが、私の一言一言に対し表情が暗くなっているのは分かった。
私に対し申し訳なく思っているのか、後悔しているのか。
それとも、当時の自分が、私が五龍であることを知ったら、と想像しているのか。
言葉を零し続ける口はもう閉じることができない。
スウォンが聞いていないことまで話してしまいそうだ。
周りの音なんて聞こえない。
狂ったように私は言葉を編み出す。
あの日、城の追手が家を襲撃した時、仮に私が力を使うことに躊躇いが無かったとしても使̀う̀こ̀と̀は̀で̀き̀な̀か̀っ̀た̀。
何故なら、
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。