第85話

-雨に駈ける- 二
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2023/05/18 13:34


今晩は雨が酷かった。



ゼノ
青龍、次は枕投げしよー!
シンア
うん
ジェハ
うんじゃなくてもう寝ようね〜君達幼児じゃないんだから!特にゼノ君っ!君は一体何歳よ
ゼノ
ぅ〜童心に帰りたい時もあるんじゃよ
ジェハ
君はしょっちゅう帰ってるでしょーが。そしてキジャ君!どさくさに紛れて枕独り占めしないの!
キジャ
ぐ……


なんで僕が幼児のお守りみたいなことしてるんだろう……

というよりも、まずこの子達の年齢を確認したい。



行動が一桁の子供なんだけど。
18歳児と20歳児と2000歳児と言っても過言では無いよ……なぁに2000歳児って…

こーゆー時こそ、ユン君やシーラちゃんが居て欲しいものだね…



ゼノ
よーしそんじゃあ……緑龍の布団に突っ込めー!
キジャ
おー!
シンア
おー
ジェハ
?!?!何するんだい君達?!あーあーせっかく綺麗にしてもらった布団がぐっちゃぐちゃ…


本当に、寝てくれないかな。



そう思った、その時だった。



全員
___?!


ピシャンと雷が落ちたのと同時に、感じた。



シーラちゃんの気配が、あまりにもおかしい事に。



キジャ
なんだ、これは……!
シンア
シーラ……変っ……!
ジェハ
これは、あまりにも………!
ゼノ
……無理だったか


ドンドンドンドンドンッッ

今度は彼女の部屋から大きな物音がした。
物が落ちたとかいう大きさじゃない。

………人が、暴れている?



考えるよりも先に、僕らは身体が動いていた。



兵士
ちょっと、何を……っ?
ジェハ
ごめん、緊急事態なんだ。シーラちゃんっ!


部屋の前に立つ兵士を押しのけ扉を開こうとしたが、何故か開かない。
中で何か塞がっているのだろうか。



シンア
開かない…っ
キジャ
退けっ私が!


キジャ君が膨張した爪でその扉を無理矢理こじ開けた。



中は暗かった。

眠っているからかと思ったが、布団の中は空。



扉の傍には、彼女の医療器具や薬草が散らばっていた。



物が偶然落ちた、という感じでは無い。
ばらかれた……いや、誰かが落とした?



??
……うぅ………あぁぁ……ッッ


暗闇の中から呻き声が聞こえた。
そこに目を向けると、



部屋の隅でうずくまり、頭を抑えて酷く苦しむ彼女の姿があった。



キジャ
シーラ!
ジェハ
シーラちゃん……?!
シーラ
うぅ、うあぁぁぁ……!


その苦しさの所為せいか自傷するかのように壁に頭をぶつける彼女に駆け寄り、なんとか壁から引き剥がして僕の身体に寄りかかれるように彼女を抱きとめた。

それでも苦しみは消えないのか、彼女は僕の腕の中で暴れるように頭を抑え振っている。



シーラ
あぁ、あ、うぅぅぅ…ッ!
キジャ
シーラ!シーラ目を覚ませっ!居るのは我らであるぞ!!
シーラ
あ、っ……あ、んたら
シンア
シーラ、大丈夫……?!
シーラ
……頭、、うぅぅぅ…!
ジェハ
頭、痛いの?!
シーラ
……っいた、……あぁッくそ


痛みに顔を歪める彼女の顔色はすこぶる悪い。頬も少し痩けてこけている。
彼女が最近食事を残しがちだったことを思い出し、ぐっと唇を噛む。

もっと気遣っていたら、彼女が今こんなに苦しむこと無かったろうに……!



すると、何か考えていたゼノ君がハッとして突然声を上げた。



ゼノ
緑龍!紫龍を外へ連れ出せ!
ジェハ
え、外って今めちゃくちゃ雨が
ゼノ
いいから早くっ!俺̀達̀に̀と̀っ̀て̀緋̀龍̀城̀は̀薬̀だ̀け̀ど̀、紫̀龍̀に̀は̀毒̀と̀な̀っ̀て̀身̀体̀を̀蝕̀ん̀で̀る̀か̀ら̀!
全員
?!


思いがけない内容に理解が追いつかないのと、珍しく焦っているゼノ君に驚きが隠せないのとで頭が混乱しているけど、

兎に角シーラちゃんを緋龍城ここから連れて行かなきゃいけないのは分かった。

落ちていた毛布で彼女を包んで抱き上げ、僕は開いていた窓から大雨の降る外へ飛び出した。

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