苦しみに悶えるシーラちゃんと共にこの身一つで飛び出した僕は、屋根付きの石造りの椅子がある場所を見つけそこへ駆け込んだ。
…うーん、駆け込んだはいいものの、こんな硬い椅子に彼女を寝かせるのは気が引ける…
そう思った僕は、彼女の頭を自分の膝に乗せて、膝枕状態にした。
呼吸も安定しているようだし、口調もしっかりしている。先刻よりは楽になっただろう。
ただ、しんどそうなのに変わりは無い。
彼女は額に手を乗せ溜息をついた。
すると城の方からキジャ君達が走って来るのが見えた。
キジャ君の声音が低く、あまりにも真剣な表情に流石のシーラちゃんもビクッとなった。僕も。
それくらい、彼も心配していたんだ。
彼女はそう優しく笑って答えるも、その笑みは普段のより弱々しい。
それに、またこの子は自分で何とかしようとしている。
そこへ、遅れてゼノ君がやってきた。
のほほんとした雰囲気から一転、突然真面目な表情でゼノ君が口を開いた。
……それは、つまり、ずっと体調を崩していたのに、一人で我慢してたってこと?
………どうして、
皆そこで質問を止めた。
彼女があまりにも悲痛な表情をしていたから。
『自業自得』『私の所為』
これらの言葉を彼女は何度も繰り返していた。
彼女が何をしでかしたというのだろう。
こんなにも苦しめるなんて……
そこへ、雨の中僕達の方へ走って来る小さな人影を見つけた。
あれは………ヨナちゃん?!
青ざめるヨナちゃんの頭を撫で、彼女はゆっくりと起き上がった。
ヨナちゃんの後ろからやって来たケイシュク参謀が尋ねた。その後ろには衛兵が数名。
先刻シーラちゃんが部屋で暴れた音が彼らにも聞こえてしまったようだ。
すると、シーラちゃんは笑って言った。
そう言って溜息をつく彼女の表情に疲弊が見え隠れしているのに気づいた。
……彼の言う通りだ。
今緋龍城へ戻ってしまえば、先刻みたいな状態へ逆戻りするのは目に見えている。
どうしようか……
すると、遠くで兵士達の叫び声が聞こえた。
そう言って彼は兵士達のもとへ向かった。
すると、同様に兵士達の方を見ていたシンア君がハッとして言った。
………百年連れ添っていたからかな。
アルマ君も、僕らのように魂で感じることは出来ないけど、相棒の不調に気づいたんだろうな。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。