ヨナちゃんが見つめる方向に目を向けると、四方からアルマ君に弓を構える兵士達が見えた。
そこには、ケイシュク参謀も。彼が兵士達に指示を出しているように見える。
……ていうか、え?
彼ってアルマ君がシーラちゃんの子だって、知ってるよね……?
ハクを城外へ閉め出した時、アルマ君もハクの傍に居たもの。
参謀の意図が分からない。
兵士達は今にも矢を放とうとしている。
ゼノ君の驚いた声で振り返ると、シーラちゃんが雨の中へ飛び出して行った。
動ける程回復していないはずなのに、
雨に駈け出すその姿に、迷いは見えなかった。
彼女は少し走った所でバテてしまったのか立ち止まり、息を荒らげながらも膝をつかないよう耐えている。
矢が一斉に彼の頭上から降ってきた。
すると______
〘 堕ちろ 〙
地を這うような、低い声が辺りに響いた。
その瞬間、放たれた矢が全てアルマ君に届く前に不̀自̀然̀に̀地̀に̀落̀ち̀、折̀れ̀た̀。
その異様な光景にしんと静まり返ったその場は一転、どよめきが起こった。
今のが、紫龍の能力か_______?!
今の光景を目にしたケイシュク参謀が、バッと此方を振り返ったのが見えた。
力を使った彼女は喉を抑えて酷く咳き込んだ。
そのまま力尽きたのか、前に倒れる………
ことは無かった。
彼女が地面に倒れ込まないように、アルマ君がシーラちゃんの前で伏せたから。
そこへユン君が息を切らしながらも辿り着いた。
流石の彼女も、"医者なら自分の体調管理くらいちゃんとして!!"と涙混じりに言われたら反論出来なくなっていた。
流石ユン君。我らが母よ……
不調を気づかれないように気を張っていたからか。
緋龍城に入ってからずっと相棒に会えなかったからか。
気が抜けたかのようにシーラちゃんはアルマ君に身体を預け、そのモフモフな胴体に顔を埋めて……
そのままぐっすり眠ってしまった。
ずっと眠れずに一人で痛みに耐え続けてきたんだ。
それらからやっと解放されて眠気が襲ってきたんだろうね。
シンア君から少し警戒心が見えた。
何故かと思ったけど、その答えは直ぐにやって来た。
そこに、先程アルマ君を仕留めようとしたケイシュク参謀の姿があったから。
ヨナちゃんが立ち上がり、厳しい表情で彼に問う。
彼の昂った感情と共に、彼の爪も膨張した。
その感情は、僕らにもある。
目の前で仲間を、"家族"同然の仲間を殺されかけたのだから。
アルマ君も参謀に対し低い唸り声を上げ、シーラちゃんを庇うように警戒心を顕にしている。
緊張感溢れるこの場の空気を破ったのはゼノ君だった。
ゼノ君の申し出に、その場にいる誰もが驚きを隠せなくなった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。