あっきぃが俺の顔を覗き込んだ。
いつも通りの距離。
…よりも、少し近いくらい。
あっきぃが少し言葉を選ぶように間を開けた。
そのあと、俺の頭上あたりを指さして言う。
つられて俺も上を見る。
『残り、30日』
なんなんだろう。これは、
ゲームのUIのようだ。
とは、言われたものの
正直本当にそれ以外の感想が出てこない。
あっきぃの頭上当たりを見た。
何度見ても、どこを見ても 数字は見えない。
彼にも衝撃だったのか、頭の上で手を動かし
触るみたいに確認している。
本当に分からない。
説明も何もなく、
ただ。 30日と書いてあるだけ。
あっきぃが苦笑いをしながら言った。
俺もつられて少し笑ってしまった。
そのなにかが知りたいんだけど…、
まぁ、今すぐには分からないだろう。
そんで、終わり。
変なものも見えてるが
別に今すぐ何か変わるわけでもない。
スマホを、取り出し
グループにメッセージを打つ。
『今から来れる?こーくさんもおるなら2人で来な』
すぐに既読がついた。
『いく』
『どこ』
いつも通りの短くて無愛想なメッセージ。
トーク画面を見せて2人で笑う。
いつもと同じ、ただの 日常
『残り、30日』
ふと、もう一度数字に目をやる。
減ってる様子も無く、動いてる感じもしない。
ただ、そこにあるだけ
小さく呟いてスマホをポケットにしまう。
その時
後ろから声がした。
振り返るとそこには、 そらびび。
隣…というより少し斜め後ろにこーくさん。
俺とあっきぃが同時に笑う。
だけど、こーくさんは笑ってなかった。
視線が少し上を向いている。
…誰のとは言わんけど。
何かを隠すようにそう笑った。
その隣でびびが欠伸をする。
びびはそう言うと、『適当に』笑った。
その言葉のあと、
ほんの一瞬だけ。
何かが少し減った気がした。
『残り、30日』
今、動いた?
気のせいかもしれない。
でも、何となく。
言いかけてやめた。
話を逸らそうと
少しいじりながらそう言った。
いつも通りの、会話
いつも通りの、空気
その中で
誰も『それ』の意味を知らないまま
時は過ぎていく












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!