フェンスを跨ぎ、ギリギリの場所に立った彼。
イヤホンから伝わる私の鼓膜は、
ずっと東卍の仲間たちの声で揺さぶられていた。
しばらく下を向いて考えた後、私もフェンスに手をかけた。
佐野万次郎は、目から涙を零した。
潤んではいるが、その暗い瞳が輝くことはなかった。
佐野万次郎は私の手を握り、目を瞑った。
閉じた目から涙が溢れ出す。
彼は重力に身を任せるように、そのままフラッと倒れ込む。
繋いだ手に引っ張られ、私も下へと導かれた。
蘭side
あなたからの連絡が来ない。
一体、仲間である瓦城を置いてどこへ行ったのだろう。
ならなんだ。
裏切り...なんて、あなたに限ってそんなこと、、、。
まあ、梵天裏切ってたのは事実だけど、、、。
周りを見れば、みんなスーツが赤く染まっていて、
今にも意識がトビそうな状態だった。
その後松野が電話で呼んだ、梵天直々の救護隊が来て、
応急処置をしてもらった。
瓦城も止血をし、献血をし、
命に別状はないとのことだった。
そういや竜胆、東卍に入ってからあんまり
話したり笑ったりしてないよな。
そんな状況下じゃなかったのは分かるけど。
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救護をしてもらったおかげか、瓦城が目を覚ました。
回復力すげえな、。
瓦城はどこか不安そうな顔をしていた。
あなたと一緒に行動してたのか、?
じゃあなんでここにいない、、、。
マイキー、?
マイキーの居場所を知ってるってことか?
てかなんでマイキーと、、、。
まさか、、、。
宙ぶらりんと浮く元首領の身体。
ハアハアと、乱れた息遣いで下の街並みを見ていた彼は、
上を向いて私の顔を見た。
佐野万次郎と繋いだ手の反対の手は、
ちゃんとフェンスを掴んでいた。
目を見開く彼。
私はこれまでの訓練でついた力のおかげもあって、
首領を引っ張り上げることができた。
コンクリートの上で、力が抜けたように倒れ込んだ彼を、
フェンスの向こうに追いやる。
今ここで彼を助けたところで、
この後見つかって、殺されるかもしれない。
捕まるかもしれない。
だけど、自分の前でもうこれ以上、
亡くなってほしくなかった。
偽りでも、自分の心を救ってくれた人を失いたくなかった。
まさかそんなこと言うなんて思ってなかった。
彼は、ちゃんと変わってくれるんだ。
そのとき、屋上のドアが開いた。
入ってきたのは言うまでもない。
ゾロゾロと集まってきた東卍の幹部。
佐野万次郎は彼らを見て、後ずさりした。
ボスが、みんなよりも前に躍り出た。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。