昼休みの生徒会室はいつもより賑わって、笑い声で溢れていた。
蘭が描いた先生の似顔絵があまりにも似ていたから、みんなして笑っていたのだ。
もちろん、私もその中にいる。
斗真とこうして笑えているから、よかったって
今、思ってる。
チャイムがなった。
締め切った生徒会室には遠く、小さく響いた。
会長の言葉に不満の声を漏らしながらも全員揃って生徒会室から出た。
D組の私は教室が遠いから早足で歩く。
そんな私の腕を誰かが掴んだ。
私が言い返す前に斗真は教室に入ってしまった。
誘ってくれたことが嫌なわけじゃない。
斗真も一緒にいると楽しい。
でも、前までの気持ちでいてはいけないような気がして、胸がざわざわした
滝沢と目が合った。
今日の部活は、滝沢のソロがある曲の練習だった。
チューバの私には、クラリネットのファーストの人の顔がよく見える。
滝沢の顔が見えるだけで、目が合うだけで
恥ずかしくて、でもうれしくて
構えた楽器に隠れてしまう。
齋藤が本気の顔で心配してきた。
軽く笑ってやった。
もう一度前を向くと、滝沢が視界に入って、
やっぱり照れてしまった。
そのまま視線を横にずらした。
滝沢のとなりには、また、つぼみちゃんが座っていた。
あのパートの割り振りを決めたのは、パートリーダーである滝沢だ。
座る位置まで決めたかは分からないけど、
滝沢がつぼみちゃんを同じパートに決めた、という事実は、見てわかるし、私には辛いことだ。
目を伏せて、なるべく2人を見ないように練習を続けた。
ようやく曲練習になった。
先生が小さな声で滝沢に何か言った。
それから、クラのソロから、と合図をした。
みんなが同時に楽器を構えた。
この光景は、あと何度見られるんだろう、と
クラリネットのソロでは伴奏役でなかった私は思うのだった。
滝沢が息を吸った。
Esの音────
続いてAs、B…
いつも聞いて、耳に馴染んだはずの音が
なぜか
一つ一つが跡を残して、私の中からいなくなる。
感動してしまった。
まだ練習なのに。
やっぱ、家で練習してたんじゃん…
勝手に一人で微笑んでいると、齋藤の視線を感じた。
結構本気で言った。
齋藤は、ははっ、と短く笑って、了解、と呟いた。
前を向き直すと、つぼみちゃんが滝沢に話しかけていた。
きっと、ソロを褒めているのだろう。
いいなあ、あんなふうに話せて。
心の底から思ってしまった。
悔しかった。
れっとーかん
ってのかな…
この言葉が、劣等感、と私の頭の中で漢字になるには、時間がかかった。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!