開始してからどれくらいたっただろう。
なんとかレポートを終わらせることができた。
PCを閉じ、机の上を片付ける。
ふと外に目をやると、結構遅い時間な上、雨が降っていた。
天気予報...雨降るって言ってたっけか?
傘...
持っているかどうか怪しかった俺は、カバンの中を一通り探してみる。
幸運にも、そこには折りたたみ傘が入っていた。
メモ用紙と一緒に...
メモ用紙の内容は、
『今日は夕方雨降るよ〜きっと天気予報を見ていない弟のために、優しいお姉様が傘を入れといてあげよう! 紗英より』
という内容だった。
“紗英”というとは見ての通り姉の名前。
面倒見がよく、色々世話を焼いてくれるが、俺は少し苦手だ。
まあ、今回のように助けてもらうことも多いから、強くは言えないんだけど。
―昇降口―
大学の昇降口に出て、折りたたみ傘を開く。
ふと隣からそんな声が聞こえる。
チラッと振り返ってみれば、身長150cmにも満たないであろう小柄な女性が立っていた。
普段の俺なら絶対にこんなことしないだろう。
でも...
目の前に突然、画像を突き出し「可愛くない?!」と言ってきたので覚えている。
そう言って彼女は、遠慮がちに傘を受け取る。
彼女の声が、人の少ない昇降口に響く。
その声を背中で聞きながら、PCが濡れないよう庇い、できるだけ急いで駅に向かう。
この行動が、彼女の心を動かすきっかけになっていたことは、また別の話。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。