大粒の雨が降る、憂鬱な日の午後。
今日は学校が半日で、早く家に帰ることができた。
昔からそうだが、
学校が午前で終わる日は、
休日よりも幸せな気分になる。
今日は出かける予定もないし、
家でゆっくりできそうだ。
しかし、私がリビングでボーっとテレビを眺めていると、
廊下の向こうからモリヒトの声が響いた。
その声に私は一瞬、目を丸くする。
ニコの使い魔――モリヒトは、完璧超人だ。
料理も家事も、全てを一人で完璧にこなす。
しかし、申し訳なくなって私が手伝おうとすると、
すぐに断るほど、こだわり強い。
そんな彼が、他人である私に頼むなんて、
よほど大切なことなのだろう。
私は自然と頷き、置いたリモコンを手に取った。
モリヒトは、
買い物リストと書かれた、
小さなメモを差し出す。
メモを手に取り、私はリストをざっと確認し、
傘を持ってスーパーへと出かけた。
私がいない間の護衛が心配だが、
モリヒトが居るなら大丈夫だろう。
彼は強い。
安心して、背中を預けられる――
そう思いながら、足を進めた。
スーパーの自動ドアを抜けると、
雰囲気は"戦場"へと様変わりした。
そういえばモリヒトから聞いていたが、
今日はスーパーの特売日らしい。
目の前には、
大勢の主婦が特売品を我が先にと取り合っており、
所々人の波に押される悲鳴が耳に入ってくる。
モリヒトに買い出しを頼まれた食材は、
小さなメモを隙間なく埋め尽くすほどの量だった。
しかも「特売品は最優先で」と書かれているせいで、
私はあの人混みの中に突っ込まなければならない。
私は大きなため息をつきながらも、
小さな背丈を生かして人ごみのなかに紛れ込んだ。
ただでさえ小さい体を生かし、
人々の間をすり抜けながら商品をかごに入れていく。
しかし、前方では主婦たちの戦争がまだ続いていた。
彼女らの間に滑り込み、
一瞬の隙を狙って手を伸ばすが、
すぐに別の手が目の前の品物を持ち去っていく。
――しかし、奥に埋まっていた品物を無理やり掘り出し、
すぐに特売コーナーを後にした。
呪霊や呪詛師と戦ったわけではないのに、
手や体は汗と雨でずぶ濡れだ。
実際にこういう戦いを経験すると、
母の強さを思い知ってしまう。
ようやくの買い物リストの食材でカゴを埋め、
レジまでたどり着く。
戦場を抜け出した私の体は、
もうすでに悲鳴を上げている。
袋詰めを終え、
両手に戦利品を抱えながら、家路へ向かう。
疲れで足は重いが、達成感はある。
ただ、もうやりたいとは思わない。
もう、あの戦場は懲り懲りだ。
私は主婦ではなく、
呪術師として、
呪いを祓っていた方がいいのかもしれない。
そう頭に浮かべながら、
やけに重い帰り道を歩いた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!