「いや、むりですって!」
「「いやいや、むりじゃないですよ!ばっちりです!さいこーです。ダイヤモンドの原石でした!近年の最高傑作です!」」
「見せるなら、楽屋でいいじゃないですか!!」
「お二人ともお友達さんの事、気にしてますよ!」
「スタジオセットの中の方が絶対映えますから!」
「「私たちを信じて!!」」
「……何を信じろと!!?」
「「腕と見る目を!!」」
「やっそれは信じてます。プロの方ですから!」
「じゃあ、信じられないのは、何ですか?」
さっきまでのハイテンションが、嘘のように急に静かになる。
「それは……」
「わかりますよ。急には心は変わらない。
」
「だから、私たちを信じてみてください
。腕によりをかけました。」
ね??背中を優しく押す、声と手のひら。
「そーっと入りましょ?」
「案外気がつかないかもしれないですよ?」
2人はゆっくりと静かに扉を開いた。
【スタジオ内】
翔太と2人でポーズをとる。
「あ、良いですね!窓を背に2人で振り返って!」
「2人で手を伸ばして、迎え入れるように!」
「そう!もう少しくっついて!」
「翔太。」
「ん?」
「何であんなにイラついたの?びっくりした。」
「……昔の俺たちに似てた。」
「あぁ……。」
「涼太は「舘様」を見つける前。俺は「美容番長」になる前。…どうしたら良いかわからなくて、焦って、上手くできなくて自己嫌悪。大嫌いだった、自分の事。」
「……そうだったね。」
「上手くできない自分がいやになった。だいきらいだった。…でも。涼太がそばにいたから。認めてくれたから。『せめて、自分は自分を好きでいよう。翔太が翔太を嫌いでも俺は翔太が大好きだよ。』って。そう言ってくれたから。」
「ふふふ。今日は随分話してくれるね。」
ふはっ。誰も俺たちの声なんてきいてないじゃん(笑)綺麗な笑顔。
「だからつい、追い詰めちゃったな。悪いことしたわ。」
後で謝る。そう、つぶやいた。
「はいっ!一回休憩挟みます!」
メイクさんいるかな??汗かいたから少し直してもらいたいかな。
暗がりの奥の扉が開く。
目をこらしてみるとそーっと入ってくる人影。
あら?メイクさんとスタイリストさんと...……。…………………………。そのシルエットは。
大股で近づく。
真夜中の月の下、そっと静かに芳香を放ちながら咲く月下美人のようなその人は……
「……くおん……?」
「……どうかな?……似合ってる……?」
「……うん。とても。もとが良いのは分かってたけど……。予想以上。」
「ふは!いいじゃん。似合ってる。美人だな?」
「……正直、わかんない。……けど、涼と翔太さんがキレイだって言ってくれるから。スタイリストさんの2人が最高傑作だって言ってくれるから。自分は……キレイ……だとおもえるように努力する……。」
「んんっ。前向きだけどだいぶうしろ向き!」
「ふははは!まあ、いーんじゃね?さっきよりは全然いいよ。おまえ。」
翔太とふたりで久遠を抱きしめる。
「イケメン!まぶしい!近い!」
「いや、おまえも美人だから」
「いや、久遠も大概美人だからね?」
カシャッカシャッカシャッ!シャッター音が響く。
音の方を見るとカメラマンさんが、カメラを構えていた。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!