いるまside
向かいの横断歩道から、呑気にソイツが歩いてきた
ガシッ
胸ぐらを掴むと、ソイツは困惑した顔を浮かべた
バッと俺の手を振り解いて、
こっちを思いっきり睨みつけてくる
なつの目が見開く
なつの横を通り過ぎる
♢♢♢♢
らんside
__________数時間前.
庭で、組員と談笑していて
最近は平和だったからって油断していた。
ガサガサッ
ガンッ
俺が後ろを向いた瞬間に、
さっきまで話していた組員が頭を鈍器で殴られた
ビリビリッ
スタンガンを当てられたのだろう。
全身に電気が走って、
頭がクラクラして目がチカチカして
最後に見えたのは、頭から血を流しながら
俺の名を呼ぶ、組員の姿。
いるまは13歳から若頭として実際に裏で
敵組織と やり合ったりしてたし
じいちゃんだって若い頃から前線に出てたのに
みんなが重度の怪我を負って帰ってきて、
俺も役に立ちたくて家を出ようとした時
毎回、いるまが俺を止めた
今思えば、あの時いるまを振り払ってでも
外に出ていれば良かったかもしれない
俺は、ついさっき目の前で組員が血を流した時
身体が動かなかった。
俺は今、緋箭家の1番奥にある
薄暗く狭い和室に
手と足を縛られて閉じ込められている
...来てくれないと、俺
死ぬかもなぁ、ここで
ガラガラ...
なんだ、このクソジジイ
ドカーーーーンッ
襖を思いっきり蹴飛ばして、
いるまが部屋に入ってくる
笑ってないけど、笑ってるような
怒ってるけど、楽しんでいるような
そんな表情をしている
グサッ
いるまに向けられていた刀が、なぜか
目の前のオジサンに刺さっていた
そう言いながら俺の手と足に結ばれた縄を解く
いるまなら来てくれてると思ったけど、
まぁそれは言わないでおこう
ドサ...ッ
いるまの体がフラついて、俺の肩に倒れ込む
腹部が、出血していた
思いっきり髪を掴まれ、引っ張られる
短いナイフが、頬に突きつけられる
男がナイフを上に上げ、
それから俺の首を狙って振りかぶった
死を覚悟して、目を瞑った。
ザシュッ











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!