「いいからいいから!」
先程通路で迷う私に声をかけてくれたのは、この金髪のお兄さんだった。
彼に連れられて外に出たはいいものの、インフォメーションどころかショッピングモールからも離れている気がする。
なんとなく胡散臭かったがまさかここまでとは。
「何が大丈夫なのかな?
あんなところで迷ってる女の子がここからショッピングモールに帰れるの?」
言い訳をして別れようとするも、手首をガッチリと掴まれ逃げられそうにない。
「だったら大人しくついてこないと〜
…それとも危ないことされたい?」
顔を近づけてニヤリと笑う男性に恐怖を覚える。
勝手に手が震えてきて、目が熱くなった。
こんなはずじゃ、なかったのに。
彰人くんにただプレゼントを渡したかっただけなのに。
そう思うとぼろぼろと涙が溢れてきては止まる気配がない。
雫がコンクリートにたくさんシミを作っていく。
「ちょっとお嬢ちゃん泣かないでよ!
ボクが悪いみたいじゃん〜」
男性はカラカラと笑った。
痛いことしないからさ、とその双眸を細めたときだった。
背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。
ばっと振り返ると、そこには走ってきたのか肩で息をする幼馴染の姿があった。
「誰あれ、キミの彼氏?」
顔を顰めて顔を寄せて耳打ちしてくる男性。
逃げようとすると余計にキツく手首を握り締められた。
私の声に気づくなり眉を吊り上げた彰人くんはずんずんこちらへ歩いてきて、いとも容易く私から男性を引き離した。
「な、なんなんだよお前!」
彰人くんの背中に回っていたため顔は見えなかったが、きっととても怖い顔をしているだろう。
いつもより数段ドスの効いた、唸るような低い声だった。
分かったらさっさと失せろ、と彰人くんが吐き捨てるのと同時に男性は弾かれたように走り去って行った。
彰人くんは深い深いため息をついた。
…何に対してかは分からないが、ものすごく怒っている。
心底疲れたようにまたため息をひとつ。
それはごもっともなのだが。
私は持っていた紙袋を差し出した。
彰人くんは紙袋を受け取ると目をぱちぱちと瞬いた。
それからふっと笑って肩にかけていた鞄から小さな箱を取り出す。
中身はイヤリングのようだ。
成程、さっきはこれを買いに行ったのかと合点がいく。
嬉しかったのと、ほっとしたのとでまた涙が込み上げてきた。
思わず彰人くんの胸にダイブしてしまう。
宙を彷徨っていた彰人くんの右手が私の頭の上に置かれる。
なんだか急に恥ずかしくなったので、彼の身体に頭をぐりぐりと押し付けると、お前なあ…と苦笑される。
その手を置かれた頭から、強張っていた私の身体がじんわりと暖かくなった。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。