あなたside.
学校から1人で家に帰れば、
家の前に人影があるのに気づく。
少し遠くから見てもわかる。
少し遠回りして、時間を潰そう。
そう思って歩き出す足を止めて、方向を変える。
風磨 「勝手すぎる。」
10メートルは離れていたはずなのに、
彼の言葉は私に対してのもので…
胸がぐっと押し潰されて、
逃げたいと思うのに足が動かない。
・
風磨 「あなた。」
怒った声の理由はわかってる。
誰だってこんなに露骨に避けられたら、
きっと良い気分ではないだろう。
『辛かったよね。』
佐藤くんに言われた言葉を思い出す。
辛くて辛くて、苦しくて苦しくて、
やっと告白して、解放されたはずなのに。
・
風磨くんにぐっと腕を掴まれる。
掴まれたところから、熱が広がってくる。
好き。
好き。
好きです。
膨らむ気持ちは、
何度しぼんでもまた膨らんでくる。
『もう諦めてよ』って
何回自分に言ったことだろう。
・
腕を引かれて、目を合わせられる。
久しぶりに見た風磨くんは前と何も変わらない。
風磨 「いきなり告白してきて、」
あれ?なんで…
風磨 「話もしないで俺を避けて、」
なんで、風磨くん…
風磨 「考える時間くらいくれたって…」
なんで、風磨くんが泣きそうな顔してるの?
風磨 「避けないで。」
いつも強気でかっこいい彼が、
こんなにも弱々しく私にそう言った。
・
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!