<不死川side>
冨岡のダイイングメッセージのおかげで、狼が誰なのかわかった。
だが、それをみんなが信用してくれるかどうか。
この証拠を見せれば納得してくれるだろうか。
どうしたのだろうか。
いつもは30分前に呼び出しをかけるのに、今日は3時間も前だ。
疑問に思いながら、俺は部屋を出てホールの定位置に着いた。
ホールには、既に胡蝶と我妻、そして宇髄がいて、他の人を待っていた。
俺は胡蝶にそう返事をして、自分の座席につく。
しばらくして、全員が集まった。
それと同時に、伯爵が2階のテラスに現れた。
悲鳴嶼さんが、いつも通り、威厳のある態度で伯爵の次の言葉を促す。
ぽーかー?
聞き慣れない言葉に、俺達は首を傾げる。
その様子を見て、伯爵は別の質問を俺達にした。
それなら聞いたことくらいはある。
最近流行っている紙の遊びだ。
黙っている悲鳴嶼さんに代わって、伊黒が答える。
その返事を聞いて、伯爵が満足げに笑った。
伯爵の言葉と同時に、2階から1枚の紙がヒラヒラと落ちてくる。
ここまでを一息に言った伯爵は、喉の調子を整えるように一度深呼吸した。
そして、スゥッと息を吸う。
伯爵の最後の言葉に、俺達は全員息を呑む。
ここで宇髄に勝たせてしまったら、今夜は襲撃が行われてしまう。
また2人、犠牲が出てしまう。
せっかく、冨岡が命がけでヒントを残してくれたのに。
勝たなければ。
絶対に勝たなければ!
2票でも大きい。
その2票で、死ぬ人が変わるのかもしれないのだから。
伯爵が、パンパンと手を叩く。
その瞬間、目の前のテーブルが変わった。
俺達は今、7人だ。
だから、正七角形のテーブルになった。
そして、目の前には、カードを置くくぼみが。
どうしたらいいのか、と、それを呆然と見ていると、自動でカードが配られた。
5枚。
それと同時に、役が書かれている紙も配られた。
みんなを見ると、既にカードを窪みに置き終えており、未だに置いていない俺をじっと見ていた。
慌てて、役の書かれている紙と自分の手持ちカードを見比べ、いらないものを置いた。
だが、誰が何のカードを置いたのかわからないから、当然、誰とシャッフルするか決められるはずもなく_______、
あっさりと宇髄を勝たせてしまった。
だが、宇髄が怪しいことを言っておかなくては。
宇髄に先を越される前に、俺は単刀直入に言った。
宇髄は、飽きたように大きなため息を吐いた後、ダルそうにそう言った。
俺はすかさず、ずっと持っていた冨岡の羽織をみんなに見せた。
胡蝶が近づいてきて、冨岡の羽織を手に取ってまじまじと見る。
その様子が気になったのか、伊黒と我妻、悲鳴嶼さんまで寄ってきた。
みんな気づいたのだろうか。
その中で1人、声を上げたのは宇髄だった。
その言葉に、みんなが俺を怪しむように見る。
何も言えない。
宇髄の反論は的確だ。
誰も、昨日冨岡が裁縫をしているところを見ていない。
というか、冨岡が裁縫ができるのかも怪しんでいる。
伯爵が投票を急かす。
俺は、何も言えなかった。
これじゃあ、俺が狼ですって言ってるようなモンなのに。
みんなが部屋に戻っていく。
しばらくして、1つの部屋から出てきた人がいた。
宇髄だった。
宇髄の姿が、メキメキと歪む。
しゃがれたガラガラ声で、狼が言う。
思わず、俺はゴクリと唾を飲み込む。
狼がそう言うのと同時に、肩に激痛が走った。
ボリッガリッ、バリッ、と音を立てて骨を砕かれる。
身体のあちこちから血がしぶいた。
意識が遠くなる。
俺は、口元を歪めて笑みを作った。
それが、俺の最後の言葉だった。
薄れていく意識の中、俺は願った。
どうか、どうかこの残酷なデスゲームが、早く終わりますように。
もうこれ以上、犠牲が出ませんように。
と。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!