さとみくんの声が聞こえる。
返事しなくちゃ。返事しなくちゃ……
俺はスプーンを持ったまま固まる。
さとみくんの目を見ずに返事をする。
やばい。完全に気を使われている。
俺は今泣いていた。
昔の事を思い出して。
あの後俺は大量殺人を起こした。クラスで俺と彼女をいじめた奴らを片っ端から始末した。
教室は血の海と化したその真ん中で高笑いをしていた自分を思い出して、背筋が震える。
バレないように隠していたけれど、そりゃバレるか。笑
ころちゃんは俺の背中に手を回してヨシヨシとさすってくれている。
今更になって泣くのは馬鹿馬鹿しいだろうか。
それでも涙が溢れる。
俺があの時君と友達にならなければ。
助けを求めなければ。
彼女はまだ生きていたかもしれないのに。
その未来を奪ったのは他でもない,俺自身なのだ。
深呼吸して呼吸を整える。
目の前のカレーを1口食べる。
少しだけ辛いカレーは何故かいつもより美味しく感じられた。
そばに置かれたティッシュを手に取り、涙を拭く。
俺は強くなった。
大切な友達もできた。
彼女の繋いでくれた命を,しっかりと引き継いでいく事。
それが、俺の使命だと思っている。
あなた, 俺の生き方は間違っているのだろうか。
俺だけ幸せになってもいいのだろうか。
少しぐらい、いいよな。
あれだけ苦しんだ分,少しくらい楽しんでもいいよな。
出所したら、君の墓参りに1番に行くよ。
ほら、お揃いで買ったキーホルダーも持っていくから。
待っててよ。大事な友達も一緒に連れていくよ、騒がしくなるだろうけど。
そう思って、顔を上げた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!