リヴァイさんがはや歩きで歩いていく。
その後を、ペトラさんが追っていった。
箒の柄を掴む力が無意識に強まった気がする。
何故、こんな些細な事で悩んでいるんだろうな…。
2人が兵舎の中に入っていくのを見送ると、直ぐに掃き始めた。
悪く言えば…私は考える事を放棄した。
満面の笑顔で歩きながら此方に来るのは、
今誰よりも信用できる、と言っても過言ではない…
ハンジさんだった。
率直な質問をすると、
不思議そうに目を見つめられた。
最初の言葉がこれだったら、誰でも怒るか…。
自分が取った行動に反省していると、
ハンジさんは腰を屈めて、私と同じぐらいの目線まで来た。
私もハンジさんの目を見つめ返すと、にっこりと怪しく笑った。
ペトラさんの事を察してるのかな。
観察力に感心しながらもゆっくり頷いた。
小屋の隣にある、ベンチに座って話を聞いた。
ハンジさんは、仕事の合間に様子を見に来てくれたのだという。
嬉しさもあるけれど、半分は申し訳なさだった。
くだらない事で悩んでいるのを、そんな人に話そうとしていたなんて。
はぁ…と自分自身に呆れた時、ハンジさんは口を開いた。
そう言われ、静かにあった事を話していく。
…リヴァイさんの 笑顔 と比べた空を見上げながら。
太陽の光が少し、眩しくて目を細めた。
ふふっと、コーヒーのような苦笑いをすると
ハンジさんは私とは正反対な顔で、目を輝かせていた。
そんなに、楽しい事をいった覚えはないけれど…。
私の方を見ながら、またハンジさんが話始めた。
首を傾げながら聞いてくる。
けれど…私は、耳を疑った。
「リヴァイさんの事が、好き?」
そんなはず、ない。
…私に想われても、困るだけだろうし。
それに、そうだったとしても何もできないだろう。
感情を…表に出すのが、得意ではないから。
ハンジさんは、ニコッと笑った。
私は言ってる事が何となく分かった。
つまり…
大きく頷いてくれて、少しだけ自信がついた。
ハンジさんに、相談して良かったかもしれない。
私は心からにっこりと笑った。
驚いたような声と顔をしていたけれど、
ハンジさん…何かあったのだろうか。
この世界に来て初めて、
本当の人に笑顔を見せた気がする。
焦ったようにして、ハンジさんは立ち上がり
手を振りながら兵舎の中に走って入っていった。
私は気になって、箒を置いて
ハンジさんが行った方向へと歩いていった。
探そうとしたは良いけれど、見失った。
辺りを見回していると…後ろから肩に手を置かれた。
低い声にビクッとして、
リヴァイさんの方を振り向いた。
今…会いたくなかったのだけれど。
心の中で、溜め息をつきながら頭を下げた。
リヴァイさんは離してくれない。
私、掃除しろって言われたんじゃないっけ?
頭の中が?で埋まっていく中、リヴァイさんは声を掛けた。
思わず、変な声で返してしまった。
それこそ、ペトラさんがいるじゃないか。
というか…4人も部下がいるんだから、頼めばいいのに。
理解出来ないまま、断る事も出来ずに頷いた。
いや、本当にペトラさんはどうしたのだろうか。
仕事を今まで見てきた訳でもないし、私に出来るのだろうか…。
不安になっていく私と、腕を掴むリヴァイさん。
何処か嬉しい自分がいて、大人しくついていったのだった。
次回に続くё
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。