第42話

#41 泡沫の夢だとしても。
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2025/04/30 10:00 更新







kwmr
……伊沢から始めた物語だろ
kwmr
伊沢がここまで頑張ってきたから、
後輩だったから……じゃないと僕も
ここまでついてこないと思うけど

もう、とっくの前に約束の五年間は過ぎただろ?と
河村さんは付け足した。

河村さんはかつての先輩ではあるが、今も昔も変わらずクイズを通して共に戦う同士である。時には互いの事を支え、時には互いに裏切って突き放しているが。















だからこその信頼がある。
だからこそ、共に始めようと誘ったんだ。



……あの後輩と一緒に。







































kwmr
それに今はあの頃のような……
身内だけじゃないんだ
izw
だからこそ、じゃないですか


名前が世間に知られる度に、対応する相手が強く
なっていく度に会社は成長していく。その成長と共に、
責任という思い荷物が着いてくるのだ。














kwmr
……なんだ、今の伊沢、随分と
センチメンタリズム感情主義だな
izw
カメラも無いですし、
これくらい良いじゃないですか

肩をすくめて外面の、お得意の笑顔を見せた。
肩の力が抜けたその様子は場の雰囲気を和ませるのに
十分だろう。









kwmr
またスキャンダルの餌食になるぞ
izw
勘弁してほしいですね……
kwmr
誤解だったけどな
izw
……第四の権利マスメディアを嫌う人間が多い事を
自ら実感しましたよ

あれだけはもう二度とごめんだ。
職場に来た時に皆から暖かい目で見られてぬる過ぎて
辛かった。ただ効率良くしようと考えただけなのに。

もう今となってはクイズが恋人だ。
























kwmr
まぁ何度も言うが、
ここは都市伝説の中だ



























kwmr
……福良も、そう言っていた










izw
……福良さんが?
 


kwmr
アイツもここに来ていた、僕も
『案内人役』とやらを全うしなければ
帰れないんだ
izw
……へぇ、大変ですね

河村さんは肩を竦めて溜息をつき、やれやれといった
ように憂鬱そうにしていた。でも、そう河村さんが
言うって事は俺もその『案内人役』を全うしないと
いけないのでは…と思い、自分も煩わしいと感じた。










kwmr
不思議な事に、逃げようにも逃げられない
何かから魅了チャームをかけられて、動けない
kwmr
諦めて、問題に取り組むしかないが……


そこまで言ったところで、河村さんは黙ってしまった。
どうしたんですか?と言おうと脳が働いたが、その働きの前に、河村さんは目付きを変えて再び口を開けた。



































kwmr
……相変わらず伊沢は
話を逸らせるのが上手いな









izw
……?そうなんですか?

急に刺さったその言葉を聞くと、図星のようで
図星でないような、不思議な感覚に見舞われた。



izw
自分で気が付いていないなら、
無意識なんですかね、これ
kwmr
知らないな



























・弱さを見せることで現実に、同じ世界で生きていると
ギャップを示す。
・自発的に色々行動して、次から次へと仕事が
もらえるようにする。マグロのように動き続ける。
・切磋琢磨するような交友関係を広げる。人付き合いを
面倒だと思わない。寧ろチャンスだと思え。
・自己管理ができないと話にならない。寝る時は寝ろ。







……と、何かの本に書かれてあったことを思い出す。
俺は人間であるはずなのに、"普通"とはかけ離れ、
少し変わった人生を送っている。
別にそれが自身にとって嫌ではなくて、寧ろ好都合
だったと思ってしまうからか、人間味のない人間に
なってしまうのだ。





izw
こういうのって、やっぱり会社の事を
答えるべきなんでしょうが、果たして
自分にそれを答える資格があるんですかね
kwmr
……どういう事?












izw
目標というから理念というか……
会社を初めてからずっと何かを
見失っている気がしていて
izw
何が俺で、何が俺じゃないのか、
これはどの顔向けの顔なのか……







クイズ番組に出演する自分。
バラエティー番組に出演する自分。
ニュース番組でコメンテーターになる自分。
サッカーが好きな自分。
運転免許試験に筆記で落ちる自分。

全部全部自分である。これが"伊沢拓司・ ・ ・ ・である。










俺が出演する番組を大体見ている人は分かるだろうが、番組によって求められる顔も姿も性格も違う。
適応する為に自分は変化して"伊沢拓司"でありながら
"伊沢拓司"ではない自分へと"成る"のだ。










izw
一人でいても日常がクイズに染まって、
休日をきちんと休めなくて、
この前も倒れちゃいましたし……
izw
ワーク・ライフ・ハーモニー仕事と生活の調和
取れなくて、身体が気持ちに追い付いて
いなくて、何だか、疲れてきて……





クイズは好きだ。
クイズというジャンルを引っ張っている。
クイズを仕事にして生計を立てている。


嫌いでは無い、嫌いではなく好きだからこそ
何故こうも自身が疲労しているのかが分からないのだ。

















声が震え、目尻が熱くなる。
自分でも驚くほど感情が決壊していた。
テレビの前では"してはいけない"顔になっているというのに抑えられない。防衛機制していた抑圧が、
膨れ上がって溢れていきそうだった。



自分から始めた物語を、自分から背負った大きな
"荷物責任"を、自分が苦しんでどうするというのか。














izw
俺がこうなのに、そんな『最高の経験』を答えてもいいのかなって


喉が痛くなり、声が嗄れる。
声が出なくなる代わりに涙腺が崩壊した。






















立ったまま泣く自分の背中を、河村さんは黙って
優しく、力強く撫でてきた。その手は、そっと俺を
包み込むようにあたたかった。



河村さんの掌が俺の背中を往復する度に涙が少しずつ、
細い糸のようになって頬を滑り落ちた。俺は目を
閉じて、ただその感触に身を委ねた。












言葉は要らなかった。彼の存在そのものが、
壊れそうな俺の心を繋ぎ止めてくれていた。





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