珏3芹

🤍🗝
336
2023/02/28 13:41
私の仕事上恋愛なんてできない

芸能界に入って数年経って今は昔より人気もでてきた

なのにあの出会いが私の運命を狂わせたんだ



仕事が終わり、自宅へと向かう
マンションへ着き、バッグの内ポケットから鍵を取ろうとすると、
「あれ、鍵がない…」

今日帰り際に人とぶつかってしまい、カバンを落としてしまった時だろうか

色々考えながら立ち止まっていると1人の男性に話しかけられた

🤍「大丈夫ですか?」

「んー、大丈夫じゃないかもです笑鍵無くしちゃって」

🤍「今日もう夜遅いんで俺の家来ますか?」

「いいんですか…?」

🤍「こんな時間に外にいる方危ないんで」

「ありがとうございます、お言葉に甘えてもいいですか?」

初対面なのになんで自然に頷いてたんだろう

でも不思議とこの人なら大丈夫だって思えた、この時から私はあなたに惹かれてたのかもしれないね

🤍「ここ、僕の部屋です」

「私の部屋と近いですね、」

🤍「同じマンションなのに1度も会ったこと無かったですね」

🤍「とりあえず自由にくつろいでください」

🤍「夜ご飯食べました?」

「いや、仕事で食べ逃しちゃって」

🤍「簡単に作りますけど食べます?」

「……お願いします」

🤍「その間にお風呂どうぞ、着替え俺のですけど使ってください」

「何から何まですみません……」


お風呂に入っている間、この状況をすんなり受け入れている自分に改めて驚いた

「名前聞いてない……」





「お風呂ありがとうございました…」

🤍「スウェット大きかったですね…」

「結構大きめなんですね笑」

🤍「ちょうどご飯できたんで食べましょ」

「いただきます」

🤍「どうぞ召し上がれ」

「んー美味しいです!私オムライス1番好きなんです」

🤍「良かったです笑」

「そういえばお名前聞いてなかったですね」

🤍「八村倫太郎です、倫太郎って呼んでください」

「初対面でいきなり呼び捨ては…」

🤍「俺が呼んで欲しいんです、お願いします」

「倫太郎……くん」

「呼び捨てはハードルが高すぎるのでくん付けで笑」

🤍「分かりました笑いつか呼び捨てで呼んでください」

「頑張ります…」

いつかなんてあるのか分からないのに、彼の真っ直ぐな瞳を見ると頷かずにはいられなかった

🤍「あなたさん、」

「あれ、私名前言いましたっけ?」

🤍「テレビに出てたの見たことあって」

「あ、ありがとうございます」

「倫太郎くんって何歳ですか?」

🤍「23です」

「私と同い年ですね、」

「もしかして倫太郎くんの仕事って芸能関係?」

🤍「なんでわかったんですか?」

「なんか同じ感じがしたから、職業病かな」


色々と話しているうちに夜は過ぎていく


🤍「話しすぎちゃいましたね笑」

「ですね、もう1時なんて時間過ぎるの早いですね」

🤍「僕お風呂入ってくるのでベットで寝てていいですよ、俺今日ソファで寝ますから」

「そこまでして頂かなくても……私がソファで寝ますから」

🤍「……とりあえず入ってきますね、本当にどこで寝てても大丈夫なんで!」

「分かりました笑」

倫太郎くんがお風呂に入って5分もしないうちに睡魔が襲ってきてソファの上で意識を手放した



🤍side

一目惚れだった

彼女の存在は知っていたけど声をかけずにはいられなかった

「家に来ますか?」

なんて初対面で言えることじゃないのに、

彼女が家に来ただけで俺は浮かれていた

今日だけだけど出来るだけ彼女に尽くそうって決めた

お風呂上がりに俺のスウェットをきてぶかぶかになっている姿をみて可愛い以外の感情が無くなっていた

押しに弱そうな彼女に呼び捨てで呼んで欲しいなんて無茶なお願いもしたけど

彼女の口から出た
「倫太郎…くん」
の破壊力は半端じゃなかった

まして呼び捨てはハードルが高いからという理由でくん付けなんて可愛いにも程がある

色々聞いていくうちに話は進み、時間だけが過ぎていった

そろそろ僕もお風呂に入って寝なきゃなと思い彼女にベットで寝るよう提案した、

このままだと埒が明かなそうなのでとりあえずお風呂に入ることにした


お風呂から上がるとソファで丸くなって眠っている彼女が、

「可愛い……」

さすがに疲れていそうな彼女をソファで寝かせるのは男としてのプライドが許さず彼女を抱き抱えて寝室へと運びソファへと寝かせた

「いい夢見てください…」

そう言って僕はソファで眠れない夜を過ごした


翌日俺は早めに起き気合を入れてご飯を作った
時間になっても起きてこない彼女を起こしに部屋へと向かう

寝顔も天使のようで、規則正しい寝息を立てて眠っている

寝顔を見つめているといつの間にか10分も経っていたらしい

朝ご飯が冷めてしまう前にと彼女を起こす覚悟を決めた

「あなたさん…起きてください……」

あなた「……んぅ、倫太郎、く…ん?」

「おはようございますあなたさん」

「今日お仕事休みですか?」

あなた「ぅ…ん、」

どう見ても寝ぼけている、どうやらあなたさんは朝がとてつもなく弱いのかもしれない

「朝ご飯作ったんで食べましょ」

あなた「うれ…し…ぃ」

あなた「でも、あ…と5ふんだ、け」

「駄目ですよ、ご飯冷めちゃいます」

なんとか彼女を起こし食卓へと向かわせる


あなた「和食なんて…久しぶり、」

「目覚めました?」

あなた「うん…、覚めた、」

これはまだ若干夢の中に居そうな気がする


ご飯を食べ進め彼女の頭もようやく働き始めた頃に話を振る
「鍵、どうしますか?」

あなた「昨日ぶつかった場所の1番近くの交番に聞きに行ってきます、それでもダメなら不動産屋さんだね」

目が覚めたせいか少しずつタメ口から敬語へと変わっていくのは物寂しい。

「見つかるといいですね」

あなた「本当にありがとうございました」

あなた「倫太郎くんがいてくれたおかげで助かりました、半日だったけど色々尽くしてくれてありがとう」

鍵が見つかるということは僕はあなたさんともう会えないことを示している

連絡先だって芸能人である彼女が交換出来るわけがない

「またいつでも来てくださいね」

「次会ったら敬語とくん付けはなしでお願いします」

あなた「分かった、頑張ってみます」


色々と準備を済ませたあと彼女は俺の家から出ていった
半日しかいなかったのに、彼女の存在がこの家に住み着いたかのように残っている









あれから1年半が経って俺も仕事が増えてきた

もちろんあなたさんは前よりももっと人気が出て俺の手の届く存在なんかじゃない

あの後あなたさんは引越してしまったし、1度も会えていない

きっと俺だけがこの一目惚れした時の感覚を忘れずにいるんだろう


今日の仕事は急に入ったもので、予定していた男性モデルが急に出れないことになり代わりとして俺に仕事が回ってきた
詳細などは準備が出来ておらず、大まかな内容はCMで使用するカップルのデートの様子を取るものらしい


「よろしくお願いします」

??「お疲れ様です、今日もよろしくお願いします!」

そこにいたのは1年半振りのあなたさんだった



🤍side end





まさか倫太郎くんと仕事で会えるなんて思わなかった

鍵を無くしたことで事務所の方の配慮でしばらくしてマンションを変えた

あの後からずっと会えてないのにあの時の出来事が昨日の事のように頭から離れなかった


1年半こんなにも記憶に執着しているのは私だけだろうな


まさか今日の相手役の代わりとして来たのが倫太郎くんだなんて、

「倫太郎くん、久しぶりだね、」

🤍「ねぇあなたさん俺との約束忘れちゃいました?」

「忘れてないよ、ごめん久しぶりすぎて……」

🤍「なら名前よんで、あの時出来なかったから」

「りん…た……」


ス「あなたさんスタンバイお願いしまーす」

「あ、はーい!」

「ごめん、また後で!」

🤍「後で呼んでくださいね」

彼の言葉は波の音に掻き消されていた


浜辺で行う撮影は順調そのものだった
天気にも恵まれ、撮影は押すことなく予定通り進んで行った
最初は相手役が変わることに不安があったけど、そんな不安を消してくれるような相手が今ここにいる


最後のシーンは私が彼の頬に手を当てて見つめ合う
監「本番行くよー」

その合図と共に本番が始まった
私が彼の頬に手を当てる所までは予定通りだった
その後彼は私の手を離さないように握っている
見つめ合う所でふと2人とも笑みがこぼれカットがかかった

カットがかかったあとも私の手を話さず目線も逸らしてくれない彼

「本当にこういう風に出来たらいいのに」

そんな彼の瞳に吸い込まれるように私は自然と言葉を紡いでいた

🤍「え……」

確実に引かれた、彼の表情を見ればわかる
口から出てしまった言葉はもう戻せない
私は逃げるように現場を後にした








🤍side


「本当にこういう風に出来たらいいのに」

彼女の口から出た言葉は俺の予想なんて遥かに超えたものだった

あなたさんと離れたくなくてカットがかかったあともしばらくその状態でいた時、

小さな声で言っていたけど俺は聞き逃すなんてできなかった
驚きすぎて自分の顔がどうなっているかも分からないほどに頭が混乱していた

言った直後に俺の表情をみてあなたさんはハッとしたような顔をして俺から離れていった

その後結局あの言葉の真意も聞けず俺はまた彼女への想いだけを募らせるだけだった







あれから今日で1年…
撮影が終わってから何度もこの海に来た
彼女がいるはずがないのに、ずっと探している
それも今日で終わりだ、
今日ここに来たのは彼女への想いを終わらせるため、これ以上この感情を持っていても腐ってしまう

夜が深まる時間帯に来たせいか身体に当たる風が冷たい
けれど、この熱を覚めさせるには丁度いいのかもしれない

「最後まで俺の一方通行だったのかもな…」

あの時の言葉さえ自分の幻聴だったんじゃないかとさえ思えてきた

あなた「倫太郎…」

自分の名前を呼んで欲しい願望がついに幻聴として叶ったのだろうか、ふと後ろから声が聞こえる

「末期だな……」

あなた「約束果たしに来たよ」

淡い期待を持ちながら後ろを振り返るとあなたさんが立っていた

「現実ですか?」

あなた「うん、残念だけど現実だね」

「なんでここに……?」

あなた「私だけタメと呼び捨ては嫌だから倫太郎も」

「わか…った、なんであなたがいるの?」

あなた「今日ここに来なきゃいけない気がして」

あなた「来てみたら倫太郎がいるから驚いた笑」

「なんで、今日で終わらせようと思ったのに……」

「あなたはいつも俺の想像を超えてくる……」

あなた「終わり…でもいいよ、倫太郎がそうしたいなら」

「俺が終われないって分かってるでしょ…」

あなた「優しいもんね、倫太郎は」

「あの時の言葉は本物?」

あなた「本物だよ、けど倫太郎の顔みたらどう見ても引かれたって思った」

「引いてなんかない…!驚いただけ…」

あなた「……確認出来て良かった笑」

俺はあなたに近付きたくて足を進める

「あなた大人っぽくなった?」

あなた「さっきドラマの撮影終わってそのまま来たからかな」

「その白いワンピース似合ってる」

あなた「25になってワンピースは恥ずかしいね笑」

「もう出会ってから2年とちょっとだね」

あなた「会ったのは3回だけなんてね」

「もう会えないと思ってた」

あなた「私もそう思ってたよ」

「ねぇ、キスしてもいい?」

あなた「ん、いいよ」

チュッ…

あなた「倫太郎好き」
「もしこの世界に居られなくなっても倫太郎と一緒にいたい」
「そしたら結婚しない?」

「そうしよう」
「一緒に逃げよっか」

あなた「辞めてもいいくらい愛してる」
「そしたら2人だけで生きてこう」

「一緒に生きていける財力はあるから大丈夫」

あなた「お互いずっと想いあってたのになんでこんなに遅くなっちゃたんだろうね」

「最初からこうすればよかったね」

あなた「倫太郎は本当に幸せ?仕事まで失うかもしれないのに」

「幸せだよ、すごく。」
「俺は人生であなたしか愛せない」
「この世界に入ってあなたに出会えて良かった」

あなた「あの日私が家の鍵なくしてたのが出会いなんて可笑しいよね」

「それまでは今まで同じマンションに住んでることも知らなかった」
「でも俺はあなたを見た時一目惚れしたよ」

あなた「一目惚れっていうのは初めて聞いた」
「『鍵ないなら家に来ますか?』って初対面なのに自然と頷いてた私もあの時もう手遅れだったのかも」

「言った後に少し悩んだよ」
「あなたは有名人で初対面の男の家にに入れるなんてどうなんだろうって」

あなた「私は有名人なんかじゃないよ」
「倫太郎のこと知らなかったけど少し興味が湧いたの」
「優しかったね、家にいる間何から何まで尽くしてくれて」

「俺がそうしたいって思った」
「少しでもいい所見せないなっていつもよりかっこつけた」

あなた「私はどんな姿でも倫太郎をかっこいいって思うよ」
「倫太郎しか見れなくなっちゃった」
「倫太郎くん、どうしようもなく好きにさせた責任取ってくれないの?」

「もちろん責任は俺に取らせて」
「俺以外にあなたは渡さないし、この役目は俺だけのものだから」
『愛してる』

やっと手に入れた幸せは何を失ってでも手放す気は無い
駆け落ちでもして彼女と逃げてしまおうか
いや、今だけは何も考えずに腕の中でこの温もりを感じていよう
































































プリ小説オーディオドラマ