???視点
私に元々名前は無かった。
ただ…その場限りで名付けられただけの命。
皆が思い出してしまえば、消えてしまう命…それだけだ。
だけど…皆はそんな私に、思い出を与えてくれた。
皆のその優しさが、私は苦しかった。
いっその事蔑んでくれれば良かった。
そうやってどん底に落としてくれれば、私は遠慮なく汚れ役をする事が出来るから。
私は道具だから、道具としてだけ扱ってくれれば良かった。
皆が平和に過ごせるようにする為の手伝いをする、道具。
だから感情や感覚は不要だった。湧き上がってくる物全てを押し殺し、怒りと言う感情だけが残った。
人の形をした道具…それで、良かったのに。
……もう、昔から分かっていた。
誰が、私を『絢野碧夣』としての人生を歩ませたかは。
気づいたら空から無数の剣が降ってきていた。
だが、私は今それを気にしている場合では無い。
皆必死になっている。
自分を守るため…または人を守るために。
…今だけは、自分勝手になってしまおウ。
……ビュンッッッと私は対象に目掛けてナイフを投擲シタ。
…グシャッッッ
血色のナイフは、対象に命中シタ。
希恵side
…何が、起こった?
碧夣が…悠斗の鳩尾を刺した?
取り敢えず焦ったんだろうけど…井坂くんの判断は正解だ。
…何を言ってるの?
悠斗は…令治さんと彩芽さんから生まれた正真正銘絢野家の一員なのに。
途端に悠斗の周りが煙に包まれた。
煙が晴れた時の悠斗は、髪を後ろに結い、黒い角が生え…耳がまるで羽のような形に変化していた。
それはつまり、正真正銘…神の味方だという事。
でも、確かにあたし達は血が繋がってるはず……
……あ、最初会った時の状態に戻ってる。
何て?
本当にそれはそう思う。て言うか方言出ちゃってるよ。
…と思ったが、確かにこんな話をしている場合では無い。
……碧夣の発言と表情が比例していなかった。
口角を限界まで上げ、瞼からはボロボロと涙が溢れている。
余程、ずっと我慢してた反動が今来たんだろう。



































編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。