この 弱々しい 小さな 子猫を
自分で引き取って 世話をしていくと
あの日に… 決めたとき。
僕の中で 揺らいで消えかかっていた
「 命の灯 」 の
小さな 炎 みたいなものが…
少しだけ ほんの少しだけ だけど…
大きく 明るく
輝いたような 気が… したんだ。
子猫が 動物病院に入院している間に
お母さんに 色々と教えてもらって
自宅の一室に 子猫を迎える準備をした。
ケージやらトイレやら 何から何まで
猫を飼うために 必要なものは
初めて 目に入るものばかりで…
準備をしている時点で 僕は…
ぐったりと 疲弊してしまっていた。
…本当は… 不安だらけだった。
犬の世話をした事はあるけど
猫と 長時間も 一緒に…
しかも 一緒に 暮らした経験なんて
無いに 等しい し…
そもそも 猫は 苦手 なのに…
どうして 引き取る なんて…
言って しまったの だろうか。
たぶん きっと…
その理由の 半分以上を占めているのは
僕の この…
独りよがりな 「 罪悪感 」や…
よく分からない 「 責任感 」を…
この子猫を 受け入れて 見守る事で…
昇華したかったから… だと 思う。
あまりにも 傲慢で 自分勝手で
あまりにも 人間のエゴの 塊で…
自分に 吐き気がするほど
憂鬱で 浅ましくて…
本当に… 情けなくて… 仕方がない。
でも…
動物病院の ケージの中で
端っこに くるんと丸まって
すやすやと 穏やかに 眠る
白くて ふわふわの毛並みの
この子猫を 見ていると…
ただ 単純に…
可愛くて ただ 愛おしくて…
なんだか 心が 柔らかい気持ちになって…
この子猫を 「 守ってやりたい 」と
心から そう 思えるのも… 事実だった。
うちで 飼っていた あの犬と
色も 毛並みも 全然 違うのに…
あの 黄金色の 瞳や
ふわふわした 毛の奥の 暖かさや
たくさんの 陽の光を吸い込んで 香る
あの 暖かくて 優しい香りを…
恋しく… 懐かしく 思い返した。
不安も 心配事も 尽きやしない。
でも… …やっぱり。
何度 考えて 考えて…
最適な 答えを… 出そうとしても。
出てくる答えは… ひとつ だった。
ふと 顔を上げた 僕と…
優しい お母さんの 視線が…
パチリと 合う。
病院から退院した子猫を
我が家に 迎え入れてからは…
驚きと 困難と 困惑の… 連続だった。
子猫は 右の後ろ足が 悪くて
力を入れられずに フラフラと
不安定にしか 歩けない くせに…
それでも 走るし 跳ねるし
どこにでも 飛び上がろうとするしで…
1秒たりとも 気が抜けなくて…
目が離せない 状況になった。
取り急ぎ 自宅の空いていた洋室を
「 子猫部屋 」として
ケージから トイレから
何から何まで 詰め込んだものの…
覚束無い足取りで 部屋中を走り回っては
うまく止まれずに 壁に衝突したり…
部屋に元々置いてあったソファや
本棚や 家具の 空間や隙間に
入り込んで出てこなくなり
どうにか 引っ張り出せたと思ったら
全身 ホコリまみれになっていたり…
ちょっとした段差にも
へなちょこなジャンプをしては
飛び乗ろうとして… 落ちたり…
まるで… 産んだ覚えのない
危なっかしい 赤ん坊の 面倒を…
四六時中 見ているようだった。
あまりの暴れっぷりに 辟易して
取り急ぎ ケージに閉じ込めると…
今度は 頭に響くような 鳴き声で
にゃおにゃおにゃおにゃお と…
「 ここから 出せ! 」と 延々と
訴えるように 泣き続ける始末で…
従順な 犬とは 全く違う… 猫の…
「 飼い主 」と 「 飼われてるもの 」の
距離感に… ずっと… 慣れないままだった。
この部屋からは 出さないままで
世話をして… 育てていこう。
夜になったら ケージにしまって…
割りきった 関係を続けていこう。
そんな 僕が思い描いていた
軽い考えは… 浅はかだったようで…
僕が やっと 自室での仕事を終えて
なんとか 眠りにつこうとする
深夜の 暗い 家の中に…
なんとも 寂しく 切なく…
誰かを呼ぶような 子猫の鳴き声が…
毎日のように… 響いていた。
少し離れた 僕の部屋まで
悲しげな 子猫の鳴き声が
切々と… 届いてくる。
ただでさえ 眠りが浅い質なのに
このままでは… 倒れてしまいそうだ。
僕は 仕方なく 起き上がって
子猫の部屋まで 行くことにした。
そっと 部屋のドアを開けると…
ケージの扉を ガリガリと引っ掻く子猫と
差し込まれた 明かりの中で 瞳が合う。
子猫は 瞳を 爛々と輝かせて
今すぐに この扉を開けて 出せと
懇願するように 鳴き喚いてくる。
僕は… 疲れ果てていて…
ぼんやりした意識の頭と 身体で
ゆっくりと ケージの扉を開ける。
子猫は よたよたと ケージから出てきて
一頻り 僕の足に擦り寄ると…
そのへんにあった オモチャで
勝手気ままに 遊び始めていた。
部屋から出ないように ドアを閉めて
僕は 一切の思考を諦めて 仕方なく
部屋に置いてある ソファに…
倒れこむように 横になった。
しばらく… かしゃかしゃ ごそごそと
子猫が遊びまわる 音を聞いていると
だんだんと 睡魔が寄ってきて…
僕は そのまま… 意識を 手離した。
… the story continued …















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。