久々に帰ってきた我が国に、ゆずきは安堵する。
傷だらけの身体には、段々と力が漲り、彼女の糧となる。
友人は、自分のことを覚えているだろうか。
隠しておいたほうが良いだろうか。
そんなことを考えながら、ゆずきはゆっくりと辺りを見渡す。
その時だった。
トン、トン…!?
彼は、ゆずきの友人、トントンであった。
覚えていないのか、はたまた気づかないだけなのか、ゆずきのことはわからないようだ。
ど、どうしよ、咄嗟に嘘ついてもうたやん…!!
ゆずきは何故か、トントンに対して別人として名乗ってしまったが、彼は信じたようだった。
トントンの言う、「あいつ」とは、きっとゆずきのことだろう。
なんだか申し訳ない気もしたが、今更言うわけにはいかない。
もう少し経ってから話そう。
医務室か…え、医務室!?それって確か…!
ゆずきの覚えている限りだと、医務室は昔から彼女の友人、ロボロの一族が担当しているはずだ。
もしかすると、ロボロもいるかもしれない。
彼ならきっと、「藍澤 そら」の正体にも、すぐに気がついてしまうだろう。
コンコン…
ドアをノックする音が響く。
中から聞こえた声は、聞き覚えのある低めの声だった。
ロボロだ…!トントンに嘘をついたとはバレたくない…!
思いっきり睨みつけると、ロボロは察したようにトントンに外に出るよう促す。
ロボロの目は、真剣だった。
本気で、心配していたのだ、ゆずきのことを。
ワイワイしながら、無事に治療は終わった。
10年前は下手で、苦手だった治療も、今ではすっかり上手くなっている。
―何時の頃だろうか。昔、木から落ちて骨折したことがある。その時、ロボロは不慣れながらも、必死に手当してくれた。どれだけ下手で、どれだけ遅くても、ゆずきにはロボロの優しさが嬉しかった。
城を出てからもう10年も、当たり前のように行き来していたここに入っていなかった。
安心して涙が出そうになるのを抑えながら、ゆずきは部屋を見回す。
___________________________一方その頃――
医務室に残されたトントンは、ロボロに話があるから、と待たされていた。
珍しいな…こいつ大体メールで送ってくるのに…
トントンは、ただひたすらに涙を流した。
友人の無事を確認したことで、安心したのだろう。
ロボロも、涙は流さないものの、心の内はトントンと同じくらい安心していた。
この晩、二人は真実を知った。そして、ゆずきという少女、彼女のために涙を流したのだった―――――――














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。