獪岳は立ち止まって呟く
私にはその言葉の真意が分からなかった。だって
獪岳は普段から桑島さんの期待に応えようと努力
を怠らないのはもちろん、褒められても天狗にな
ることはなかったから
どうしてそんなことを思うの?
どうしてそんな大事な話を私にしてくれるの?
どうして…そんなに悲しそうな目をするの?
疑問が絶えない頭は今にもショートしてしまいそ
うだ。そんな私をお構いなしに獪岳は言葉を続け
た
否定の言葉より先に出たのは動揺だった。まさか
獪岳本人が未来の( 鬼になって善逸に倒される )
ことを察知してるなんて思いもしなかった。
歯車が狂い始める予兆は感じなかった
それなのに私と話してるとそう考えてしまうとい
うことは、多分元はこの世界の住民ではなく原作
に一切登場することがない私という存在が何か悪
さをしているのだろう。
真実を告げようと口を開くと、この世界に落ちた
最初の頃のように言葉がすり替わった。どうやら
獪岳にこの世界のことを伝えることはできないよ
うだ。
自身の心境を誤魔化すように冗談混じりに話した。
ただ実際獪岳は雷の呼吸を使うので、このままい
くと私の結婚相手に獪岳が選ばれる可能性は高か
った。
嘘は言っていないけど、自虐的なこの発言は自分
で言ってて悲しくなる
私の裏返った声が獪岳の部屋に響く。
「 お前と結婚するくらいなら死んだほうがマシ 」
と言われると思い先手を打ち謝ったのに、返って
きた拍子抜けの言葉に私は戸惑いを隠せなかった。
獪岳の方を見ると顔を赤くするでも耳を赤くする
でもなく、至って冷静な顔色でいた。
そっか、獪岳は私が好きだからそう言うのではな
く、死ぬよりはお金持ちの雷家に婿入りするほう
がいいと考えただけか…なんだ、、勘違いすると
ころだった
そう思ったところで、絆された感情に気づいて苦
しくなった。
考えるより先に出たその言葉に後悔を覚えたのは
そのすぐ後だった。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!