「はい、これ」
お風呂に入って貰って、着替えの服とホワイトボードを渡した。
するとこてん、と首を傾げてこっちを見てくる。
少年は座ってるから少し上目遣いだ。
左頬には殴られたあとが目立っている。
少し辛くなりながらも
「コレでお話出来るね」
と言ってニコッとすると一瞬こちらを見て固まったけと、すぐに何かを描き始めた。
【さっきは助けていただいて、お風呂と服まで貸していただいてありがとうございます】
とても綺麗な字でそう見せてくれた。
「全然平気だよ。それより、怪我見せてくれる?」
そう聞くと少し躊躇いながら服を捲りあげた。
見た途端に息が止まった。
少年のお腹には無数のアザと傷、火傷跡などがあった。
「え…?これ、全部あいつらに…?」
無意識に震える声で聞くと、辛そうに俯く。
【ほとんど親にやられた分です】
唇をかみ締めて俯く少年。
「…もしかして、虐待されてて、家出したら…的な感じ?」
帰ってきたのは
【追い出された】
の1文。
開いた口が塞がらない。
…僕は立ち上がり、小刻みに震えている少年を抱きしめた。
ただ戸惑う少年を、もっと強く抱きしめる。
そのまま頭を撫でて見ると、怯えでの震えが違うものになった。
鼻をすする音が聞こえ、慌てて離れると案の定泣いていた。
「っごめん、痛かった!?」
そう聞くとフルフルと首を振ってホワイトボードに
【初めて優しくされたから嬉しかったんです】
って書いて見せてくれた。
「…親御さんいないならさ、行く宛てないでしょ。もし困ってるなら、僕の家住む?」
その言葉に少年は潤んだ瞳で笑って頷き、何度も何度もお辞儀をしてきた。
「んふふ、大丈夫だよ、僕も1人で寂しかったし」
そして君がいいなら、と名前を呼ぼうとして知らないことに気づいた。
「えっと、名前は?」
僕の質問に少年は
【名前も戸籍もないです】
と答えた。
「なら海!うみって書いてカイね!…いい?」
僕の提案に嬉しそうに頷いた。
可愛くて仕方がない。
また抱きしめて撫でると今度は少年…いや、海も抱き返してくれた。
ココ最近で1番幸せだな。
幸せなんて久しぶりに感じたな。
仕事ずくめで心身共に疲労が溜まって限界を感じてたけど、もう少し頑張れそうだなって思えた。
この子の為ならどこまでも頑張れそうだなって。
まだ知り合って1時間未満の少年にそう思った僕は相当限界なのかも知れないな…
【よろしくお願いします】
「こっちこそよろしくね」
2人で微笑みあって暗闇から抜け出したのだった。
この子を絶対に幸せにする。
それが僕に初めて芽生えた恋心なのか、かつて両親に貰っていたような愛情なのかは僕にはまだ分からなかった。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。