なーくん →妊娠中、もともと貧血持ち
ジェルくん→なーくんの夫
なーくんside
現在AM10時15分
部屋に一人きり
強い腹痛に襲われて、その場にうずくまってしまった
ジェルくんはレコーディングで夜まで帰ってこない
スマホに手を伸ばした
痛みと貧血手が震えてスマホが操作できない。
かなりヤバイ
病院にも連絡できないし、ジェルくんも帰ってこない
完全にひとりきりだ
パチッバシャッ
気づくと足が濡れているのが見えた
破水だ…
さっきとは比べられないほどの陣痛が俺を襲った
できるだけ、息むのを我慢していたけど体に力が入る
俺の子供は産声を上げた
俺はスマホを触ってジェルくんに電話をかけた
この時、ある異変に気がついた
大量に出血してる、やばい
そう思ったときには目眩が始まっていた
うまく言葉が話せない……
頭が回らず何を言ってるのかもわからない
息も苦しい…
そこで意識が途切れた
ジェルくんside
レコーディングの合間に休憩していた時だった
ぷるるるるるる
なーくんから電話が来てたので電話にでた
それは、俺が想像していたよりずっと弱々しいなーくんの声だった
そこで音が途切れた
俺はすぐ家に救急車を呼び、急いで帰った
ガチャッ
家に入って目に入るとツンと血の匂いが鼻を刺した
そこで目に入ったのは、臍の緒が繋がったままの赤ちゃんと、血まみれのなーくんだった
額は脂汗で前髪は張り付き、服の裾は血で赤く染まっていた
どれだけ声をかけても返事を返してくれない
それでも声をかけ続けた
直に救急車が到着し、なーくんは運ばれていった
あれから何度の夜を超えただろう、何度病院に訪れただろう
どれだけ数えてもなーくんは目を覚まさないままだった
娘にはななと名付け、ここまで育ててきた
なーくんと名前はずっと考えてきていた
その中の1つ、なな
ななの前では悲しい顔なんて見せないようにしてきた
そんなななも、今日で1歳だった
そんなことも考え、今日はななを連れて病院へ向かった
どれだけ話しかけても返答はない
思わず目から涙が溢れた
その時だった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。