あの子がいれば、私はいらないんでしょ?
ある家庭に、ラー油ちゃんが新しく調味料メンバーとして加わることになりました。
そこには七味ちゃんがいました。毎日使われるわけでもなく、塩や胡椒と並べられて肩身の狭い思いをしているらしい。
辛い調味料同士仲良くしようね、とラー油ちゃんは七味ちゃんに優しく声をかけました。七味ちゃんはおどおどしながら、よろしくね、とだけ返しました。長い間塩や胡椒たちのグループと馴染めずに萎縮しているみたい。
それからラー油ちゃんと七味ちゃんは一緒にいるようになりました。
私たちはあまり消費されないからその分一緒にいられるね、とラー油ちゃんは言いました。そうだね、と他の調味料には絶対に見せない笑顔で言う七味ちゃんに、ラー油ちゃんは無意識に惹かれていきました。
ラー油ちゃんは、七味ちゃんのことが1番好きでした。そして、七味ちゃんも同じだと信じて疑いませんでした。
そんなある日、ラー油ちゃんは持ち主のうっかりで冷蔵庫にしばらく置き去りにされてしまいました。1ヶ月後、ようやく食卓の定位置に戻ることができたラー油ちゃんが見たものは、知らない調味料と仲睦まじそうに話す七味ちゃんの姿でした。
この人は一味くん、最近入ってきた人なんだけどすごく気が合うんだよ、と七味ちゃんは言いました。ラー油ちゃんはすぐに気づきました。一味くんに向ける顔が、自分に向ける顔と全然違うことに。
それからの日々、ラー油ちゃんがいくら見つめても、愛しても、七味ちゃんの心は一味くんに傾いていました。
私は彼女の1番じゃない。
分かってるのに、なぜこんなに苦しいの?












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!