𝘞𝘪𝘯𝘵𝘦𝘳 𝘴𝘪𝘥𝘦
『わざわざ来てくれてありがとうね』
あなたの家族が私たち4人を出迎えてくれた。
あなたが天国へ行った次の日、私たちはあなたが生まれ育った彼女の実家へ赴いた。
私たちが彼女の死を知ったのは日本へ出国する日。
彼女の幼なじみからの連絡で分かった。
彼女と私たちはあなたが亡くなるまでずっと連絡を取っていて、あなたと私たちを会えるようにしてくれた素晴らしい人だ。
彼女は一緒に活動していたときよりかなり痩せ細っていた。
腕には沢山の注射痕がありきっと辛い生活だったんだろうと想像がつく。
でも彼女は今にも目を覚ましそうなほど穏やかな顔をしていた。
私は彼女の頬をそっと撫でる。
私の手に伝わる冷たさがより一層彼女がもうこの世には居ないことを実感させる。
彼女からの返事は返ってこない。
自然に私の目からは冷たいものが流れ出る。
どれだけ願っても私の声も想いも彼女には届かない。
彼女が辛いとき私は側に居られなかった。
あの時もっと彼女に寄り添ってればよかった。
あの時もっと彼女に聞けばよかった。
私たち4人の啜り泣く声が響く中、あなたの幼なじみは静かに教えてくれた。
彼女は少し笑ってあなたの方へ顔を向ける。
あなたは最後の最後まで私たちのことを考えてくれていたんだ。
本当に彼女らしい。
我慢強く、人に頼ることが苦手で、すぐ無理をして…。
でも誰よりも心優しい。
それから数日後、
あなたの葬儀を終えた。
家族葬だったけど、あなたの家族や幼なじみの計らいで私たち4人やマネオンニ、会社の社長も参列させてもらった。
メンバーや家族はもちろん、マネオンニや社長が涙を流してる中私だけが泣かなかった。
泣けなかった。
彼女が『どうか、泣かないで』と言っている気がした。
だから、泣かなかった。
泣いてしまえば、そんな彼女の願いを無駄にしてしまうと思った。
______そこから半年が過ぎた
私たちは今まで通り4人で忙しい日々を送っている。
会社から名前が消えて、宿舎から全ての荷物が無くなり、まるではじめから彼女なんていなかったかのような夏が来た。
私の夏はからっぽになった。
彼女が消えた夏はまるで、終わりのない迷路を彷徨っているような息苦しさがあった。
会いたい。話したい。触れたい。もしも救えるのなら、身代わりになりたい。
放心状態のまま、手に取った携帯に通知が鳴った。
___差出人は、死んだはずの彼女だった。
蝉が五月蝿い。
頭が割れそうなほど、息が上がる。
私たちが出会ってすぐの頃。
向日葵の咲く丘で笑っていた彼女を思い出した。
もう、よく画面は見えなかった。
彼女は泣きながら文字を打つとき、句読点が増える子だった。
文字を打ちながら泣く彼女を頭の中で抱き締めた。
世界から誰かが消えても、明日はくる。
明日が消えたとしても、私は彼女を忘れない。
乾いた頬を手でなぞって、腰を上げた。
向日葵の咲く丘を目指して。


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!