耕一 side
あなたが無事だったと聞いた。
最後にあなたが俺に教えてくれたこと。
分かっていたはずなのに、分かってなかった。
ずっとあなたには頼れなかった。
俺が、弱いから。怖かったからだ。
警察「おい、面会だ。」
耕一「…面会?」
俺には、身内もいなければ友人もいない。
当たり前にこの3ヶ月間、面会者等いなかったのに。
不思議に思いながら、面会室を開けると、
数ヶ月振りに見た、あなたの姿があった。
耕一「な、んで…」
あなた「なんで、って…私、メンヘラなの。
だから、別れるとか、会わないとか言われても会いにきちゃうんだよね♪」
てへ、と言いながら飛び跳ねるあなたの姿を見てただただ立ち尽くすしかなかった。
耕一「お前の中の俺は殺せって言っただろ」
あなた「…私も耕一に話さなきゃいけないことがあるんだ。それを聞いてから、決めてほしいな」
そういうと、あなたの過去を話し始めた。
あなたは過去、犯罪に手を染めたこと。
その罪は未成年であったために裁かれず、また正当防衛であることから観察対象外となったこと。
その後、母親は自殺し独り身で今まできたこと。
気付けば俺は、久しぶりに涙を流した。
あなた「私は…、ずっと後悔してた。
でも、大病院占拠の一件から後悔するの辞めた。
だって私は、今こうやって生きてる。
生きてたら何度だってやり直せるの。
思いきり、やりたいことやって人生を全うする。
それが私にとっての最高の償い。
許されることじゃない。だけど…。
だからこそ、私は今の自分を常に好きでありたい」
笑顔であなたはそう言い残し、またね、と
あなたは部屋を出て行った。
それから、一度も俺に会いに来ることはなかった。
-----
数年後…
俺は仮釈放となった。
知事や和泉管理官等の責任者が、俺には罪がないと言い場長酌量を願い出たと聞いた。
他の同志は既に釈放されたそうだ。
当時の荷物を確認のため1つずつ出され、中身を確認していく。
あなたの香水。
あなたとお揃いで買ったネックレス。
俺の持ち物は知らないうちにあなたの存在を感じれるものだらけだったんだな。
荷物を受け取り、久しぶりの外に出た俺は監視官に頭を下げ、この牢屋から抜けた。
牢屋を見上げ、こんなところにいたんだなと思う反面、ここから出てどう過ごせばいいのか分からず立ち尽くした。
「ここ、嫌いなんですか?」
耕一「えっ…」
懐かしい声。
「私もここ、嫌いなんですよね。
なんか湿っぽくて。汚いし!嫌ですよね!」
耕一「…監視官いるのに、そんな喧嘩売っていいんですか?」
「あ!いや!その!…まぁでも!私、ここに閉じ込められてたわけじゃないし、多分…大丈夫…だと思います」
慌てて口を押さえる君。
耕一「…相変わらず、変な人ですね」
あなた「まぁまぁ、ゆっくり飴でも舐めながら、私の家に来ませんか?」
そういうと、あの時と同じサイダー味の飴を俺の手に握らせ、眩しい笑顔で笑った。
end.













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!