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第6話

▽ story 05.
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2025/11/15 21:03 更新


僕たちは閉館ギリギリまで展示物を見て回った。


そして別れの時間が近づき、博物館のゲートを
出たところで僕は重要なことを思い出した。

萌葱 遥
あの、帰りなんですけど
あなたのあなたの名字 愛
はい?
萌葱 遥
タクシーを呼ぶのであなたのあなたの名字さんはそれで帰ってください


僕の申し出に、案の定、あなたのあなたの名字さんは首を振った。


しかし、彼女をこのまま帰すわけには行かなかった。


まだ記者が外で張っているかも知れない。



ゲートを抜けた玄関部分で「大丈夫です」と遠慮する
あなたのあなたの名字さんを説得しながらタクシーを手配する。

あなたのあなたの名字 愛
タクシーなんてそんな……
萌葱 遥
僕が引き留めたせいであなたのあなたの名字さんの帰りが遅くなってしまったので
あなたのあなたの名字 愛
いえ、私も楽しかったですし……
萌葱 遥
僕にはあなたのあなたの名字さんが無事に帰宅できたか知るすべがないので。
せめてタクシーを使ってほしいんです


僕の言葉に、あなたのあなたの名字さんはハッとした表情になる。

あなたのあなたの名字 愛
それなら、連絡先を……


あなたのあなたの名字さんの言葉を遮るように、
玄関のロータリーにタクシーが止まった。

萌葱 遥
タクシー、来ましたよ


あなたのあなたの名字さんの声は聞こえなかったふりをして、
彼女をタクシーの方へと促す。

あなたのあなたの名字 愛
あの、ハルカワさんは?
萌葱 遥
僕は友人が迎えに来てくれます。


本当は友人ではなく、マネージャーの瀬戸さんだけれど
僕は穏やかな微笑みを作って彼女に見せた。


納得のいっていなさそうな表情で僕を見る彼女を
タクシーに乗せる。


バタンとタクシーのドアが閉まると、彼女は
自分が乗っている後部座席のウィンドウを下げた。

萌葱 遥
今日はありがとうございました。
あなたのあなたの名字 愛
いえ、こちらこそ……楽しかったです
萌葱 遥
気をつけて帰ってくださいね
あなたのあなたの名字 愛
はい……お気遣いありがとうございます
萌葱 遥
では、また……


微笑みを作ったまま、

「もう会うことはないと思うけど」

と心の中で付け足す。


あのエジプトの遺品に囲まれた神聖な空間で、
僕は自分の心が彼女を求めていることに
気づいてしまった。


どんなに最高な演技をしたときよりも、
大きな賞をもらったときよりも、
明らかに気持ちが高ぶっているのを感じてしまった。


僕は彼女に出会うために生まれてきたんだ
とさえ思った。


彼女と共に生きられたら幸せだろうな、と思った。


……でも、彼女は?


僕の心の中で密かに芽生えた気持ちを、
あのフラッシュが焼き尽くした。


僕のいる世界に彼女を引きずり込んではいけない。




……そう思ったのに。
あなたのあなたの名字 愛
……また、うちの博物館にも来てくださいね


彼女はそう言って、ひまわりのように
朗らかな笑顔を僕に向けた。


僕の心臓がぎゅっと握りしめられたように苦しくなる。


もう彼女に会うことはないと、決めたのに。



だけどやっぱり、彼女の笑顔をもっと見たいと
思ってしまった。

萌葱 遥
……はい、また伺います


気づけば、そう口にしていた。



僕の言葉に、あなたのあなたの名字さんは
ニコッと笑って小さく手を振った。


そんな彼女を乗せてタクシーはゆっくりと進み始める。


僕は遠ざかっていくタクシーの赤いランプが
見えなくなるまで見送った。

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