目の前にいたのは私のここに来る前の美容室の新人。
小竹夏帆ちゃん。
前、亜嵐くんが好きって言ってた…
手を繋いでいるから…わかっちゃう…か
亜嵐くんの声のトーンが一段と低くなる。
今、私全く理解出来ていない。
だって、夏帆ちゃん亜嵐くんのこと新規で顔も知らない
って言ってたよ?
嘘…だったの?
亜嵐…
呼んだことの無い名前が違う女の人から出てくる…
うぅ…
私は居るべきじゃない。
そう感じとって亜嵐くんから手を離した。
それだけ告げて夏帆ちゃんの横を通り楽屋に向かう。
私が言ってからもちょっとだけ言い合いの声が聞こえる。
やだ…
まさか、夏帆ちゃん亜嵐くんと付き合ってたなんて…
なんとなく進んでいたらやっと楽屋に着いた。
ドアを開けると私に視線が集まる。
玲於と隼と龍友さん。
あ、仲良く話してる…良かった。
挨拶は大事だよね。
マネとしてダメだな。
" 元カノと話してる "
なんて言えるかな…
きっと、言えない。私メンタルやられてる。
こんなに嫉妬心を燃やしたのは初めてだ。
たかが、元カノと言うだけでも嫌なのに。
玲於は私の手を掴むとドアを開けて引っ張る。
どこ行くの?
と聞いても無言な玲於。
助かった…って言ったら?
正直あの後は話そうか迷った。
涙が出そうだったから。
素直に玲於について行く。
ちょっと歩くと誰もいない部屋。
後ろを向いて私を見ようとしない。
やっと私の方を向いた。
なんか…優しすぎて怖い。
全て話した。
元カノが来たこと。
私の気持ちは嫉妬心だらけ。
それには玲於に共感。
今の気持ち…?
亜嵐くんは好きだよ。
大好き。
だけど、今の気持ちって聞かれるとちょっと辛い。
なんで…優しくするの?
余計に辛い…
あ ~ 、言っちゃった…
けど…本当。
下を向いて涙を我慢する。
泣いてばかりじゃ成長できない!
玲於にお礼を言って楽屋に戻ろう。
そう思った時。
玲於に抱き締められている。
不器用で塩な玲於。
玲於なりに優しさを見せてくれてるんだ。
つい、私も玲於の腰に手を回した。
こんなずるいことしていいの…?
私、最低だ。
亜嵐くんに寂しさを感じたら玲於に慰めてもらう。
こんな自分嫌なのに玲於の優しさに浸ってしまう。
トントンと頭を叩く。
こんなに優しくされているのに考えてしまうの。
" 夏帆ちゃんと話は終わったのか "
" 何の話してるのか "
自分勝手だな。
そう思う。
って、紛らわすんだ。
なら誰のため?って聞きたいけどそれ以上聞くと
怒りそうだからやめとく。
亜嵐くんがこの状況を知ったらどうなるだろ。
絶対、怒られる。
けど。
私だって嫉妬ぐらいするし…
夏帆ちゃん、嘘ついてたんだ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!