?「おやおや、またいらしてくれたんですか?」
そうのんびり話すイケメンくんに少しだけ腹が立つ。
「全部ッ!!」
?「そんなに慌てて、どうされたんですか?」
また、にこにこと微笑みながらふわふわと話すイケメン。
その顔にまたイライラがつのる。
「だからッ!お金ッ!全部なくなったから、全部の記憶、売るのッ!!!」
私は怒鳴るようにそう言った。
?「もうですか?この間、売ったばかりですよね?」
早くしてほしいのに追及してくるイケメン。
「だからッ!お客が売るって言ってるんだから、売るのッ!!」
イライラしすぎで、叫ぶようにそう言ってしまう。
もう、自分ではこのイライラをどうにかするってのが出来ない。
自分じゃないみたいに荒れている。
?「わ、わかりましたよ・・・。」
やっと納得してくれたのか、すっと手を頭に持っていくイケメン。
「最初からそうしてよねッ!!」
そう言いながらも、徐々に目が閉じていく。
ふわふわと体が浮く感覚。
意識が飛ぶ前、彼が笑ったのが見えた。
いつもみたいにふわっとした笑いじゃなくて、怪しい笑い。
まるで何かを企んでいるようなそんな笑み。
そして、彼が放った言葉。
?「お客さん、沼にはまっちゃいましたね。さようなら。」
いつもと違う言葉に、疑問を覚えながら意識を飛ばした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。