“昔々、とあるところにとても美しい女性が居ました。美しさを妬む継母の王妃に命を狙われた彼女は、7人の小人たちと出会います。しかし███によって──── “
*どうやら、ページが途切れているようだ。
「 曖昧なものに縋り付くのは良くないわ。本当は貴方だってとっくに気付いているでしょう?私が██ということも、きっと⋯ずっと前から。」
side - 羽月花影
不安そうに表情に影を落とした私にお姉ちゃんは背中をぽんっと励ますように押して明るく声を掛けてくれる。不安そうな人には優しく声を掛けて誰一人置いて行ったりしない────そんなあたたかいここが、私の大好きな居場所。
拾われる前……というよりも、私たちが助けられる前まではこんな温かい家庭は想像もできなかった。本当の両親の顔ももうぼやけていて、″ヴィアヘルーチ″に居た頃は幸せな文字なんて一つもなかったから。
お姉ちゃんはおっとりとしていて、春が遠ざかるにつれ名残の風にほどけていく薄雲のようなふんわりとした雰囲気を持つ。その一方で私の心をいつも癒してくれるような言葉をズバッと言ってくれるから、温かい春の風に背中を押されたような不思議な感覚に包まれる。
今日、2月18日は私たちの誕生日。とは言ってもそう呼んでいるだけであって、私たちはみんな本当の誕生日を知らない。誕生日を聞かれたときに答えられなかった私たちを見てお父様は少し考えた後、まだ怯えていた私たちに陽だまりのような笑顔を湛えた表情を浮かべてくれた。
─────「 誕生日が分からへんのやったら今決めればええ話やろ?俺たちが家族になった今日が2度目の誕生日、2度目の人生の始まりや。俺を父と思ってここに居てくれればええよ、もうあんたらを傷つけるもんはなんもないで 」
無論、お父様を疑っているわけではない。お父様だって忙しいだろうし、私たちの世話だけでなく他にもやりたいことが本当はたくさんあるはず。それを抑えてでも私たちの本当の父親のように接してくれたお父様が私たちは本当に大好きだった。
楽くんの言う通り今私たちが考えていたって仕方がない。それでも頭の中を駆け巡る不安が渦を巻き、浮き足が立っていた。
舞花はみんなの翳りを吸い込むように、敢えて太陽の余韻を秘めたような明るい笑顔で場の空気を変えてみせた。周りを巻き込むように、でも実は周りをよく見ているような明るさの中にある面倒見の良さはどこかの誰かさんと似ているような気がした。
久しぶりのハンバーグということで一気にわいわい賑わい始め、いつも通りの私たちの空気感になった。
ぼーっとしていた私にハンバーグのための材料を持ちながら声を掛けてきた舞花に慌てて返事をする。視野の広さと気配り力は兄譲りなのかな。
首を傾げた舞花にふふっと微笑みだけ向けて答え合わせはしなかった。きっと舞花もどこかの誰かさんも無意識にやっていることだから、わざわざ私が言う必要はないだろう。
双子は性格が似るとは言うけど、舞花達を見ていると本当にそう思う。私の場合お姉ちゃんも似ている部分はあれど、やっぱりお姉ちゃんの方が大人っぽい。
そんなこんなで各自キッチンに戻り料理を始めようとしたところ、すぐ近くの玄関あたりから足音と大きなものを置いたようなドンッという音が聞こえた。
お父様はもうとっくに街の方へ足を進めているはず。忘れ物はきちんと確認していたし…一体誰?
普段アベルタイガルはほとんど人も通らない。足跡は確実に人間のものだった。山を超えた雪のある地域に用がある人なんて、せいぜいお父様の知り合いくらいだ。思わずお姉ちゃんに抱き着くと震えながら抱き締め返してくれた。いつもは頼もしいお姉ちゃんでさえ怖がっている。
みんな怖さのあまり何も言えない。まさかお父様が居ないのを狙った不審者、とか?
どくん、と心臓の鼓動に拍車がかかり今度こそみんなが全員黙り込んだ。
─────ドン、ドン……
いくつかの物を置いたような音がした後、また足音が聞こえる。
ただ凍り付いただけの気配がそこに居座り、沈黙が重く降り積もる。異様に冴えた耳がひどく恐ろしく聞こえる足音をとらえ、喉奥まで迫り上がってきた声は見えない何かにそっと押さえられているように、形になることを許されなかった。
side - 天城一楓
怖さが全くわけではないけれど歳下の子、ましてや女の子に行かせるわけにはいかない。万が一何かあったときのために少人数で行った方が犠牲は減らせるだろう。
そう言って立ち上がると同じように考えたのか灯李も立ち上がってくれた。
怯えて袖を掴んでいた舞花を安心させるよう屈んでそう言う。いつも天真爛漫で第一印象からはあまり想像がつかなかったけれど、こういうところは兄気質だよなあ、と思う。灯李が誰かの朝を照らせるような人だとしたら、誰かの夜明けになれる人が舞花なのかも。
大袈裟に考えてしまっているが、偶然タイミングが被っただけのお父様の知り合いの可能性だってある…そう自分に言い聞かせるように考えておくことにした。みんなから離れて玄関の方へと足を進めた。
重いドアをそっと開けると、玄関の前に段ボールが3箱ほど置かれていた。人は、居ない。
何度も見たから間違えるはずがない、これは確実に字体だった。このタイミングで出掛けるのは珍しいと思ったけど、まさかサプライズだったとは。出費を抑えて買ってきてくれたのだろうか。
思わず拍子抜けしてしまったけど、危害が何もなかったなら良しとしよう。お父様は直接何かを伝えるのが案外苦手みたいだから、こういう回りくどいことをしたのかも。
林檎は俺たちがまだヴィアヘルーチに居た頃は満足に食事を取れていなかったが、稀にデザートに出てくる林檎がみんな好きで密かに楽しみにしていた。それをお父様に伝えたら、その翌日林檎を大量に買ってきてくれたんだっけか。
*あなた達はまだ何も知らない。

*ヴィアヘルーチ - 孤児院*
子ども達がお父様達に引き取られる前に居た施設。
双子を利用することが目的かもしれない。
あまり食事は豊富ではないが、稀に出るデザートの
林檎が子ども達に好評だったらしい。

昨日までに更新するの忘れてました!すみません!
ランキング入りありがとうございます🌷♡
今回お気に入りなのは
優しいお父様、ビビって抱き合う可愛い希望帆ちゃんと花影ちゃん、輪の入れ方がどこか似ている兄妹、率先して動く頼もしいお兄ちゃんズの豪華4本立てです💘誰に行かせるか迷ったんだけど率先して行ってくれそうな優しいお兄ちゃん達二人で。これは怖いよね……
【 おまけ 】
♥︎将来お酒に強そうランキング
1位:百合ちゃん
2位:葉月ちゃん
3位:未夢ちゃん
4位:楽くん
5位:一楓くん
本当に私の想像でしかないけど設定を見ていて特に強そうだなと思った方々。これ最後におまけでやったら面白そうだな〜と思ったので、好評だったら続けます🎶マイナスな方向、ネタバレを含むものでなければ書く予定です!





















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。