【樹】
“ 残業が入ったので、今日は無理です ”
終業時間と同時に入ったメッセージ。
まぁ、そうだろうな
目を細めてスマホを鞄に放り込んだ。
いきなり2人でドライブなんて、むしろ行くと言われた
方がびっくりする。
残業のない俺は
お疲れっしたーと周りに声をかけて会社を出た。
さて、帰って昨日の続きやるかぁ
頭をゲームに切り替えながら、駅に向かって歩き出した
ところにまたメッセージが入る。
誰かからのお誘いだったら面倒くさいななどと、ちょっ
と思いながら見た画面には一言
“ また今度 ”
北斗からのメッセージだった。
……は…っ?
思わず立ち止まる。
また今度?
…え?どゆこと?
今日はガチで残業入ったってこと?
ただ断るための常套句じゃねーの?
いや、また今度だって社交辞令の常套句だけど、北斗が
俺に社交辞令なんてありえないわけで。
…ってことは、また誘っていいわけ?ドライブ?
つか、コイツ
こんな小悪魔みたいなこと言うやつだったか?
“ 来月、またみんなで飲まない? ”
神高6グループにそんなメッセージが入ったのは、その
1週間後。
年末にできた取り留めのない6人のLINEグループに名
前をつけたのはきょも。
俺らの共通点なんて同じ高校ってだけだから、初めは高
校名をとって神6だったのを、髙地が
「なんかを連想してやだ」つって高の字が入った。
今回の誘いも、発起人はジェシー。
いいじゃんと、返信をしかけて、ふと思い止まる。
…北斗、どうすっかな
“また今度”からこっち、北斗の真意が掴みかねてるのと
単純に仕事が忙しくなったから連絡はしていない。
このままじゃ、次に会うのは6人の飲み会になる。
……
いや…別にいいじゃねーか…
なにがダメなんだよ…
また今度、だって別に普通にある会話の一つだろ…
「小悪魔とか思う、俺がやべえんじゃん…」
わかってたけど
それが本気なのか、正しいのか
相変わらず答えは出ないまま…
【大我】
“ 来月、またみんなで飲まない? ”
作って以来、初めて動いたグループLINEは、やっぱり
飲みの誘いで、発起人はまたジェシー。
俺が気づいた時には、すでに既読3だった。
髙地だけが、いいよと返信していた。
残りの1は慎太郎だから、樹と松村北斗の返事がまだ。
とりあえず、俺もいいねと返信する。
続けて
“ 慎太郎も日本にいれば行けるよ ”
と、勝手に返信した。
今のとこ長期出張は入ってなさそうだけど、急に2泊3日
でどこか、とかよくあるからなー
“ 慎太郎は? ”
ぽんっと、ジェシーからメッセージ。
“ 慎太郎は昨日、出張先で私用のスマホを海に水没させ
て電源が入れらんないからしばらく既読になんない ”
“ なにやってんだよ笑 ”
髙地が参戦してきた。
“ きょも、どうやって連絡とってんの? ”
お、今度は樹。
“ 非常事態だからってことで社用のほうで連絡してきた ”
“ 慎太郎、いつ帰ってくんの? ”
またジェシー。
“ 明後日、かな? ”
“ 連絡とれないの、さみしいね ”
…ホント、なんでこうも優しいのかね
ジェシーって男は。
“ 俺、遊びに行ってやろうか? ”
…樹だって優しいんだろうけど、どうしてもチャラい気
がするのはなんでなんだろ笑
“ 生存確認はできるから大丈夫 ”
“ かっけぇなー ”
何がカッケぇのかわからない髙地のメッセージは無視を
決め込んだところに
“ 慎太郎のスマホ、修理できるといいね
飲み会、行きます “
遠慮がちに松村北斗が入ってきた。
あっという間に既読がつく画面に
“ 飲み会、俺も行く! ”
慌てたような樹のメッセージが入って
全員参加が決定した。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!