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第1話

1 静かな逃げ場所
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2026/02/28 02:00 更新
昼休みの教室は、少しだけ苦手だ。


笑い声も、楽しそうな会話も、本当は嫌いじゃないのに───
どうしてか、そこにいる自分だけが浮いている気がしてしまう。

玲央奈
……ちょっと、休も
誰にも気づかれないように席をたって、向かった先は図書室だった。


本の匂いと、ページをめくる音だけのこの空間は!少しだけ呼吸がしやすい。


窓際の席に座って、適当に本を1冊開く。


けれど、文字は全然頭に入ってこなくて。

ただぼんやりと、外の空を眺めていた。


──そのとき。

玲央奈
……そこ、使ってる?
低くて、少しだけ素っ気ない声。


びっくりして顔をあげると、そこには一人先輩が立っていた。

玲央奈
あ、いえ……どうぞ


慌てて本を閉じて、?少し横にずれる。


先輩は小さく「ありがと」とだけ言って、隣の席に座った。

それだけなのに、なぜか少し緊張する。



(誰だろ、この人……)



横顔をちらっと盗み見る。


無表情で、本を開いてるだけなのに、どこか近寄りがたい雰囲気。


でも──



(……あれ、どこかで見たことある)



考えて、ふと思い出す。



(同じ部活の……先輩?)



まだちゃんと話したことはないけど、何度か見かけたことがある。


名前は、たしか────

玲央奈
……李桜りお、先輩?
思わず小さく呟いてしまった。


その瞬間、先輩の手が止まる。


李桜
……なんで知ってんの
少しどけ眉をひそめて、こっちを見る。

玲央奈
あ、ごめんなさい……!同じ部活で、何度か見かけてて……
焦って言葉を並べると、先輩は一瞬黙ってから、

李桜
……ふーん
と、興味無さそうに視線を本に戻した。



(やっぱり、ちょっと怖いかも……)



そう思ったのに。

李桜
お前は?
不意に、先輩が聞いてくる。

玲央奈
え?
李桜
名前
ぶっきらぼうだけど、それはちゃんと"会話"で。

玲央奈
あ、玲央奈れおなです……
少しだけ、声が震える。


すると先輩は、ページをめくりながらぽつりと言った。

李桜
玲央奈、か
その呼び方が、なぜか少しだけ胸に残った。

李桜
……無理して教室いなくていいと思うけど
突然の一言に、息が止まる。

玲央奈
え……?
李桜
さっきから、ずっとしんどそうな顔してる
図星だった。


何も言えなくてる。


先輩はこっちを見ないまま、静かに続けた。

李桜
ここ、静かだし。逃げる場所にスるのもアリだろ
その言い方は優しくはないのに、どこか救われるようで。

玲央奈
……ありがとうございます
小さくそう言うと、

李桜
別に
とだけ返ってきた。


それなのに。


───なんでだろう。


さっきまで苦しかったはずの胸が、少しだけ軽くなっていた。


それで、気づいてしまう。

(……もっと、話してみたいかも)



それがきっと。


玲央奈の、初恋の始まりだった。

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