第7話「風が笑う、ささやかな日々」
モンドの朝は、いつも風が心地よい。
市場ではパンの香りが漂い、子どもたちの笑い声が響いていた。
りとは空とパイモンと並んで、石畳の道を歩いていた。
「ねぇ、りと。昨日の顔、ほんとに“冒険者”っぽかったよ!」
パイモンがくるくる回りながら言う。
「え? 俺、そんな顔してた?」
「うん。ちょっとだけ……風神様みたいだったかも!」
りとは思わず吹き出した。
「そんな大それた顔してたら、街の人に笑われるよ」
その横で、空が微笑んでいた。
「でも、パイモンの言う通りだよ。
君の風、昨日とは違う。すごく穏やかで、でも強い。モンドの風に似てる。」
「……ありがとう、空。」
3人はそのまま城門を抜け、風車の丘の上に向かった。
草原にはアンバーが待っていた。
「おっ、来たね! 今日はみんなでピクニックだよ!」
バスケットの中には、焼きたてのアップルパイとスープが詰まっている。
「ジン団長の許可ももらったし、今日は“完全オフ”なんだって!」
「アップルパイ!? パイモン、それ大好き〜!」
パイモンが即座に飛びつく。
みんなが笑った。
久しぶりに、モンドの風が本当に“自由”に感じられた瞬間だった。
「……こうしてると、まるで元の世界に戻ったみたいだな」
りとがつぶやくと、アンバーが首を傾げた。
「元の世界って?」
「あ……いや、ちょっとした冗談」
パイモンが頬をふくらませる。
「またごまかした〜。りとって時々、難しい顔するんだもん」
空が空を見上げながら言った。
「きっと、まだ“旅”の途中なんだよ。りとの中の風は。」
穏やかな時間が流れる。
草の上を風が通り抜け、花びらが舞う。
その風の中に、りとはほんのかすかな“囁き”を感じた。
> 「……ありがとう……まだ、風は生きている。」
振り返っても誰もいない。
けれど、確かに風が笑っていた。
ジン団長が遠くから歩いてきて、皆に声をかけた。
「りと、空、少し話があるの。
——黒い風の源が見つかったわ。」
空気が、一瞬で変わった。
パイモンが小さく息をのむ。
「まさか、あの“忘れられた風”が……?」
ジンは真剣な表情でうなずいた。
「風龍廃墟の北。封印された遺跡の奥から、黒い気配が立ち上っている。」
りとは立ち上がり、風を感じた。
穏やかだった空気が、ざわりと震える。
「……分かりました。行きます。」
「無理はしないで。でも、君の“風”が鍵になるかもしれない。」
夕暮れの光が丘を染める。
りとは剣を手に取り、ゆっくりと風を吸い込んだ。
「——この風が、俺を導いてくれる。」
パイモンが拳を上げた。
「よしっ、次は絶対負けないぞ!」
空が微笑みながら頷く。
「行こう。モンドの風が、僕たちを守ってくれる。」
——穏やかな日々は終わり、再び“嵐”の旅が始まる。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。