第7話

風が笑う、ささやかな日々
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2025/10/19 05:37 更新
第7話「風が笑う、ささやかな日々」

 モンドの朝は、いつも風が心地よい。
 市場ではパンの香りが漂い、子どもたちの笑い声が響いていた。
 りとは空とパイモンと並んで、石畳の道を歩いていた。

 「ねぇ、りと。昨日の顔、ほんとに“冒険者”っぽかったよ!」
 パイモンがくるくる回りながら言う。
 「え? 俺、そんな顔してた?」
 「うん。ちょっとだけ……風神様みたいだったかも!」
 りとは思わず吹き出した。
 「そんな大それた顔してたら、街の人に笑われるよ」

 その横で、空が微笑んでいた。
 「でも、パイモンの言う通りだよ。
  君の風、昨日とは違う。すごく穏やかで、でも強い。モンドの風に似てる。」
 「……ありがとう、空。」

 3人はそのまま城門を抜け、風車の丘の上に向かった。
 草原にはアンバーが待っていた。
 「おっ、来たね! 今日はみんなでピクニックだよ!」
 バスケットの中には、焼きたてのアップルパイとスープが詰まっている。
 「ジン団長の許可ももらったし、今日は“完全オフ”なんだって!」

 「アップルパイ!? パイモン、それ大好き〜!」
 パイモンが即座に飛びつく。
 みんなが笑った。
 久しぶりに、モンドの風が本当に“自由”に感じられた瞬間だった。

 「……こうしてると、まるで元の世界に戻ったみたいだな」
 りとがつぶやくと、アンバーが首を傾げた。
 「元の世界って?」
 「あ……いや、ちょっとした冗談」
 パイモンが頬をふくらませる。
 「またごまかした〜。りとって時々、難しい顔するんだもん」
 空が空を見上げながら言った。
 「きっと、まだ“旅”の途中なんだよ。りとの中の風は。」

 穏やかな時間が流れる。
 草の上を風が通り抜け、花びらが舞う。
 その風の中に、りとはほんのかすかな“囁き”を感じた。

 > 「……ありがとう……まだ、風は生きている。」

 振り返っても誰もいない。
 けれど、確かに風が笑っていた。

 ジン団長が遠くから歩いてきて、皆に声をかけた。
 「りと、空、少し話があるの。
  ——黒い風の源が見つかったわ。」

 空気が、一瞬で変わった。
 パイモンが小さく息をのむ。
 「まさか、あの“忘れられた風”が……?」

 ジンは真剣な表情でうなずいた。
 「風龍廃墟の北。封印された遺跡の奥から、黒い気配が立ち上っている。」
 りとは立ち上がり、風を感じた。
 穏やかだった空気が、ざわりと震える。

 「……分かりました。行きます。」
 「無理はしないで。でも、君の“風”が鍵になるかもしれない。」

 夕暮れの光が丘を染める。
 りとは剣を手に取り、ゆっくりと風を吸い込んだ。

 「——この風が、俺を導いてくれる。」

 パイモンが拳を上げた。
 「よしっ、次は絶対負けないぞ!」
 空が微笑みながら頷く。
 「行こう。モンドの風が、僕たちを守ってくれる。」

 ——穏やかな日々は終わり、再び“嵐”の旅が始まる。

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