第8話

愛したかったから
42
2024/05/19 08:00
ユーベル
襲ってよ、メガネ君
口をついて出てしまった、信じられないような言葉。
自分自身でも驚きながら、それを悟られないようにいつもと変わらない笑みを浮かべポーカーフェイスを貫く。
ラント
君は正気か?
ユーベル
正気じゃなきゃ言わないよ
ユーベル
私だって、誰でもいいわけじゃないし
ワガママを言う子供のように言えば、隣にいる彼から溜め息がこぼれる。
何度見てきたそんな姿さえ愛おしく感じてしまった。
ラント
…いいんだな
ユーベル
いいよ
ひとしきり見つめ合ったあと、今度は"故意に"押し倒される。
彼の顔色は何一つ変わらないが、耳の先がほんのり赤くなっている。
やはり夜伽は羞恥心がくすぐられるものなのだろう。
まぁメガネ君がこの行為に手練ているのも想像つかないけど。
ユーベル
……んっ
ユーベル
ははっ、甘噛み…?
ラント
痕が残らないように、だ
首や腕、太もも…彼の優しくて痛いキスで全身が絆されてゆく。
くすぐったくて、心地が悪い。とは言いつつも悪い気はしない。変な感覚が全身を巡るだけ。
ユーベル
もう、いいでしょ。くすぐったいんだけど
ラント
…腰、浮かせてた癖に
ユーベル
……変態
彼が鳴らすリップ音と、互いの息遣いだけが
しばらくの間、響いていた



































ユーベル
…ん、はぁっ
ラント
ちょっと、逃げないでよ
ラント
まさか、直前になって怖くなったとか…ないよね?
散々優しく撫で回された後、もう私の身体は力が入らなくなっていた。
多分私は、彼と繋がるのが怖い。
痛みを感じることに対して怖いわけじゃない。
ただ、私が私じゃなくなってしまうような気がしてならないのだ。
そして知らなかった彼を知ることが、怖いのだと。
ユーベル
顔、見ないでね
ラント
それはどうかな
手の甲で自身の顔を覆えば、私の中を彼の物が貫く。
ゆっくりと私の最果てまで進んでいく。
痛くない、優しい手つき。
だけどやっぱり胸の奥がきりきりと痛んだ。
ラント
…動きづらいから、力抜いて
いちばん奥に彼の先がとん、と当たるだけで快感が身体中を巡り、力が入ってしまう。
ユーベル
っ…、ムリっ
息継ぎの間、何とか絞り出してそう答えれば私の中でそっと動き出すのが分かった。
目を見開き、懸命に止めようとするが動きは速くなる一方で。
ユーベル
ちょ、メガネ君!? ほんと、今はダメだから…!!
ラント
君が求めたんでしょ。僕は知らないから
ユーベル
ん、あっ……
波が一気に押し寄せてくるような、そんな快楽に飲み込まれガクガクと小刻みに震えてしまう。
助けを求めるように伸ばした片腕は簡単にベッドに押さえつけられた。
ラント
…君って、気持ちよくなるとそんな顔になるんだ
ユーベル
うるさい、な
顔を逸らし乱れた呼吸を整えていると、彼の大きな身体が力なく横たわる私へと覆いかぶさった。
彼の体重が加わることで繋がった部分がより奥へ押し付けられ、声が漏れ出てしまう。
ラント
もう少し、繋がっていてくれ
甘く低い声がいきなり耳元で鳴り、ビクリと反応させる。不意に中を思い切り締めてしまえば彼も声を漏らした。





それから満足するまで互いを求め合い、満たし合った。
何度果てたかは分からない。
その間、疲れていても私の中から彼の物が抜かれることはなかった。

プリ小説オーディオドラマ