第4話

高ぶったから
46
2024/05/13 08:00
誰か、私を追ってきている。
肌寒い気温の中、どこか嫌な予感はしていた。
けれどそれは寒さのせいだろうと気にしていなかったのだ。
…何を狙っているのだろうか。
人がいない場所へ誘き出し、くるりと悪寒のする方へと体を向けた。
ユーベル
ねぇ、何が目的なの?
久しぶりのこの感覚に、どこかワクワクしてしまっている自分がいる。
我ながらおかしいと自覚しているつもりだ。
だけど一度"解ってしまったもの"は簡単には失くならない。
だからいつものように口角を上げて、ニヤリと不気味な笑みを作った。
ユーベル
分かりやすすぎだよー? 足音立てたり、魔力の痕跡残したりさぁ
ユーベル
それ、わざとでしょ
何も無い空間へと鋭い視線を向ければ、隠れることを諦めたのか姿を現した。
盗 賊
なんだ、分かってたのか
ユーベル
これでも一級魔法使いなんだよー?
盗 賊
あぁ、知っている。毎回ご丁寧に手紙が来るもんでな。最早知らない方がおかしいくらいだ
ユーベル
じゃあ尚更分からないなぁ。なんで勝てないような相手に喧嘩を売るの?
素直な質問を問いかければ、今度は相手が私と同じような、ニヤリと悪魔のような笑みを貼り付ける。
それに怯えることなく、私はただただ見据えていた。
盗 賊
戦う者がなぜ強いのか、お前は知っているか
盗賊らの急な問いかけに臆することなく、何となく"戦う者が強い理由"というものを考えてみた。
けれどどれほど考えても答えはひとつしか浮かばなくて。
…メガネ君なら、分かるのかな。
ユーベル
強いから強いんじゃないの?
とんだ考えだな、なんて言われているように鼻で笑われる。
実際には言われていないけど、ほぼ顔に書いてあるようなものだ。腹立つな。
盗 賊
勇者は剣を持っている
盗 賊
それに倣うように魔法使いは杖、僧侶は魔導書
盗 賊
それぞれの"武器"を持っているんだ
あー、嫌な予感がする。
たまにいるんだよね、こういう何もわかってない盲目信者が。
多分、目の前の盗賊は一級魔法使いを神様のように扱う人間だ。
神様や女神様を信じるように、目の前の奴は高貴なる一級魔法使いに神様同様の畏敬の念を抱いている。
私が一級魔法使いになったことを知っているのなら、私が二級試験で起こしてしまった事件も当然知っているんだろう。
盗 賊
だけどな、強い奴にも弱点がある
盗 賊
武器が無きゃ戦えないだろう?
嫌な奴。
慢心、油断、驕り。全てが垣間見えて不愉快だ。
盗 賊
強い奴も、武器さえなければ塵も同然なんだよ
ユーベル
それで杖もない丸裸の私をつけていたの? 随分余裕だね
狂ったような笑顔から一変して、口角が下がり目つきが鋭くなる。まるで視線だけで私を殺してしまうような。
盗 賊
…高貴な一級魔法使いに、お前みたいなゴミは要らない



























ばかだなぁ。
私だって、一級魔法使いだ。
私だって、ゼーリエ直々の配下であるというのに。
そんな"高貴な存在"に手を出したなら、貴方であれど容赦はできない。
だって私は、"一級魔法使い"だから。

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