こさめも他の5人のところに戻ってきてから、6人は真っ青になった伯爵の案内で応接間まで行った。
王様は伯爵が手に持っていたクッションの上で顔を真っ赤にして怒っている。
最悪、シクフォニの6人全員打首になるのではとLANが恐ろしくなってきた頃、玉座に座った(乗せられた?)王様がやっと喋り出した。
王様はそう言うと、その視線だけで6人をその場に用意された椅子に座るように指示した。
それに従って、6人はそれぞれのメンバーカラーの色になっている椅子に座る。
だが伯爵は何故か立っていて、これではまるで、6人の方が伯爵よりも立場が上の者のようだった。
だが、実際にそうなのだ。
勇者は、王様の命令を唯一聞かなくても許される存在であり、その立場は王様と肩を並べる。
だがそれを知らない彼らは、なぜ自分たちだけ座らされたのかわからずビクビクしていた。
そんな中、喋るのが得意ないるまが王様のことを堂々と見つめ、通る声で尋ねた。
王様は伯爵のことをチラリと見て、そしてまたいるまに視線を戻す。
そして、その生首を少しだけ捻って、昔話を始めた。
***
あれは、今から何千年も昔の話。
人間の国と魔の国が隣り合っていたこの地域では、争いが絶えなかった、、、わけではなかった。
その2つの国はイイ感じにお互いに支え合い、お互いの国を大切にする和親条約を結んでいた。
だがある時、ひとりの目立ちたがり屋の魔族が人間の国、、、シンフォニア王国に侵入して来て、魔族が人間よりも上だということを魔王の許可なく知らしめてしまった。
つまり、その魔族が数十人もの人間を殺してしまった。
それが、この2つの国の争いのキッカケだった。
その魔族に続いて人間を殺す魔物や魔族、それに対抗するべく武力を振るう人間。
もちろん、強いのは魔術を使える魔の国の住人たちだ。
なすすべもなく魔の国の住人たちに怯えて暮らすしかできなかったシンフォニア王国の住人たちの前に、ある時、ひとりの男が現れた。
その男はたったひとりでシンフォニア王国の騎士軍に指示を飛ばして自分も最前線に飛び出、魔の国の当時の魔王を滅ぼし、魔の国をシンフォニア王国の一部にしてしまった。
その男もまたニホンという国からやって来たのだと言っていたという記録が残っている。
だがもちろん魔王一家や魔の国の住人たちはそれだけでは満足しない。
自分の祖先や頭を殺され、そして自分の住むところを奪われた。
だから魔の国の住人たちは、自分たちの力が溜まる12年間は大人しくし、それが終わった頃にシンフォニア王国に姿を見せる。
そしてその頃になると、その最初の勇者の伝説を信じて勇者召喚を行うのだ。
***
それで呼ばれたのが、今回のこのシクフォニの6人だったのだとか。
王様の話によって、今回彼らが呼ばれたのは間違いなく勇者だったからだと確信し、6人は嬉しそうにお互いに顔を見合わせる。
だが、王様はそんな彼らを見て呆れたようにため息をつき、「勇者もそんなに良いものではなかろうに」と呟いた。
王様がそういうことを言うのは、勇者がこれまでにも精神を病んで勇者らしからぬ行動を取ったことがあるからだ。
勇者は、異世界から来たチート能力を持つ人間というだけでチヤホヤされて、騎士団を引っ張る更に強い立場に立つことができる。
基本的に、騎士団は王族しか引っ張ることができないのに、だ。
そんな勇者をよく思わない人は、もちろん多くいる。
勇者たちはそんな人たちからの悪質な嫌がらせや陰口に参ってしまって戦えなくなることがあるのだ。
特に、こうやってお互い仲が良かったりすると、お互いを守ろうとするのに必死になって疲れてしまって、、、というのもザラにある。
王様の言葉を聞いて、暇72がサッと青ざめる。
彼は運動が特に苦手で、昔から略して『う◯ちくん』と呼ばれていたらしい。(他意はない)
自他共に認める運動音痴の彼にとって、運動というものは天敵である。
シクフォニのライブのためのダンス練習中でも、人を殺しそうな目をしていると他のメンバーからよく言われてもいる。
だが、王様はそんな暇72の事情は知らない。
もちろんそれにもはっきりと頷き、それから、と訓練の内容を付け足した。
本気で勇者をやめようとする暇72をいるまが止め、そんなふたりが見えていないかのように綺麗にスルーしたみことは轟王熊を倒したときのことを思い出す。
誰一人、穴に落ちて巨大な熊に襲われているみことを助けようとしなかったときのやつだ。
まあ、助けなかったのはみことならなんとかなるだろうという信頼の上に成り立った思いだが。
本当に危なさそうなときは、彼らだって必死になってみことを助けようと試行錯誤したであろう。
みことは轟王熊を倒したとき、あの剣に雷を纏わせて戦った。
あの雷がきっと、みことの魔法なのだ。
生首の王様は、そう言うと伯爵に全振りすることに決め込んだのか、目を閉じてクッションに身を(頭を?)預けてしまった。
シクフォニ6人のキラキラした目が伯爵に突き刺さる。
先程まで勇者をやめたいと言っていた暇72も、自分の魔法について知れるというゲーム的な展開に楽しそうだ。
伯爵は王様が謎自分にこんな面倒な役割を全振りしたのか理解できて、ため息をつく。
その理由は単純だ。
『今度の勇者は面倒くさそうだから』。
王様は、生粋の面倒くさがりであった。


















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。