【PHILIA side】
書類の角を揃えて机に置く。
蛍光灯の白い光が、やけに眩しい。
奥から声が飛んでくる。
署内の灯りを落とし、カウンターの下に鍵を戻す。
この動作も、もう何度目だろう。
本当は、私がやることじゃないのに。
カウンターの上で伸びをしながら、ため息をつく。
書類の山は片付いたし、鍵の場所も覚えたし、
……いやほんと、私ここに通いすぎでしょ。
裏口を開けると、夜風がばっと吹き込んできた。
森の方から、変な音がした気がして、足が止まる。
街灯の下に、影が二つ揺れている。
ぼろぼろの服。血と泥に汚れた足。
明らかに「普通」じゃない状態なのに、
誰も通報していない。
無意識に、腰の無線に視線をやる。
……いや、私は警察じゃない。ただ、警察の娘なだけ。
反射的に近づくと、青髪の子がギッと並んでくる。
警戒MAXじゃんかよぉ…
言ってから、しまった、と思ったけど。
でも嘘は言ってない。
支えながら歩いていて、ふと気づいた。
……軽い。
歳を聞いて驚いた。
というか、背丈も、目線も私と同じくらい。
なのに、腕に伝わる重さが明らかに不自然だった。
同い年くらいの子って、もっと――
笑って、泣いて、走って、転んで、食べて、
ちゃんと「生きてる重さ」があるはずなのに。
なのにこの子たちは、まるで。
「生きることそのものを、ずっと我慢してきた」
みたいだった。
署内の簡易ベッドに二人を座らせ、
私は救急箱を開いた。
いつも通りの軽い口調。
だけど、袖に指をかけた瞬間、違和感が走った。
明らかにおかしい数の傷跡。
肌の上に残る細かいもの、新しいものと、古いもの。
治りきっていない痕が、あまりにも多すぎる。
消毒液を含ませたガーゼを当てると、
彼女は一瞬だけ肩を震わせた。
それでも笑顔は崩さない。
その一言が、胸に重く落ちた。
我慢するのが当たり前みたいな、そんな言い方。
包帯を巻き終えた頃、視線を感じて顔を上げる。
隣で、カイネちゃんがこっちの様子見ていた。
「僕のルミナに触るな、」とでも言いたげな表情で。
自分に言い聞かせるように、そう呟いた。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。