鼻歌を歌いながら土手を歩く。
人虎、名は『中島敦』。
何故か七十億の懸賞金が懸っている少年。
虎に変身するだけ異能と聞いているけど、本当にそれだけなのかな。
抑々動物に返信する性質の異能はあまり聞かない。
だが、希少だからと云う理由で七十億も出すだろうか。
外国の人だから金銭感覚が狂ってるって可能性もあるけど。
金持ちほど金遣いの荒い人間は居ないが、それと同時に金持ちほど物の価値を見極められる人間もそう居ない。
となると、七十億以上の価値がある物を手に入れる為には人虎、性格には『中島敦』の異能力が必要ということ…。
その『七十億を払う程の価値のあるもの』とは何なのか。
ぽつりと呟く。
後ろから声を掛けられる。
私は振り向いて云った。
太宰さんは微笑み、そして云った。
私は迷いもなく答えた。
自殺嗜好が河でやる事と云えば、入水か入水かナンパくらいだろう。
特に凄む事なく、只淡々と云う。
私は考えてから云った。
人虎の存在を敵対している探偵社の人間に伝えるべきか。
まぁ考えるまでもない。
敵対しているのだから此方の情報を伝える事など裏切行為とも取れてしまうのだから。
太宰さんがにやりと笑う。
余裕の笑みという奴だろう。
太宰さんは意外そうに尋ねる。
本当にやると思っていたのだろうか。
『合理的じゃないし、最適解は他にある』
私はそう云った。
太宰は真剣な表情で云った。
私は静かに云った。
がっくりと肩を落として云う。
太宰さんは私に背を向け、手を振りながら戻って行った。
…多分入水をしに。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。