朝の教室は、いつも通りうるさい。
友達同士で笑い合う声。
机を動かす音。
窓から入る春の風。
その中で私は、静かに席についた。
今日も平和に終わりますように、と願いながら。
——低めの、妙に自信ありげな声。
嫌な予感しかしない。
顔を上げると、予想通りの人物が目の前に立っていた。
黒髪はきっちりセット。
制服の着こなしも無駄に整っている。
そしてなぜかキメ顔。
朝イチの第一声がそれである。
彼の名前は——白瀬まなと。
本人いわく、“学年三大イケメンのひとり”。
なお、三大イケメンが誰なのかは不明。
適当に返すと、まなとは満足そうにうなずいた。
どこから湧くのその自信。
私は鞄から教科書を出しながら、小さくため息をつく。
——問題はここからだ。
まなとは、なぜか私の机に手をつき、ぐっと顔を近づけてくる。
近い。近い近い近い。
思わず変な声が出た。
周りの女子がざわっとする
やめて。聞こえてる。全部聞こえてる。
さらっと爆弾発言。
私は固まる。
本気?
何が?
どういう意味で?
なびくわけないでしょ。
そもそもあなた自称イケメンですよね?
即答だった。
迷いゼロ。
からかいの笑いもない。
——一瞬だけ、本気っぽい目をしていた。
胸が、少しだけうるさくなる。
……いやいやいや。
気のせい。絶対気のせい。
まなとはくしゃっと笑った。
チャイムが鳴る。
先生が入ってきて、まなとは自分の席へ戻っていく。
でもその前に、振り返って一言。
教室に笑い声が広がる。
私は机に突っ伏した。
——どうしてこうなった。
平凡に生きたいだけなのに。
なのに今日も、
まなとはまっすぐ私を見る。
これはきっと、
平和とは程遠い日常のはじまり。
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。