第2話

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2024/09/03 21:00 更新




今日の音楽番組出演を最後に、
三週間のカムバック期間が幕を閉じる。





最後のステージだからと特別な演出として派手に紙吹雪を降らせると、ファン達は目をキラキラと輝かせて喜んでいた。



何度見ても僕はやっぱりその顔が好き。





今の季節に沿った、冬の始まりを歌う曲。


上から舞い落ちてくる白い紙吹雪がまるで本物の雪のようで綺麗だった。





元々一人でのびのび歌うのが好きだったのだけれど、こうしてファンからの歓声を浴びながら歌うのも悪い気分じゃない。


歌手の道を選んだ事は僕の人生の中で最も大きい決断だ。



この道が不正解にならないように試行錯誤しながら生きている。


一度この世界に踏み入ってしまったからにはもう後戻りは出来ないのだと、そう覚悟もしている。























既に少し恋しいステージを背に楽屋に戻ると、マネージャーのチャニヒョンが水ペットボトルを手にビッグハグで出迎えた。

勢い良く筋肉男に文字通り抱き締められる。



Bangchan
Bangchan
お疲れ、スンミナ〜!
Seungmin
Seungmin
ゔぁ、ヒョンもお疲れさま…




オーストラリアで生まれ育ったからか、
いつもこの人は距離が近い。


今は肌寒い季節だからまだしも夏にも同じ事をやってくるから酷い。




初対面時は礼儀正しい人だって印象だったからこそ、ヒョンが僕のマネージャー担当になった当初はかなり戸惑った。


もう今は諦めの境地に入って、されるがまま状態だ。






「もういいよ」ってヒョンの背中を二回ぽんぽん叩いて合図をすると、素直にすぐ離れてようやくペットボトルを僕に手渡した。






Bangchan
Bangchan
いや〜、カムバする度に歌が進化していくよね
Bangchan
Bangchan
今日は特に感情籠ってたし、繊細なのに芯がある歌声はスンミニの武器だと思う
Seungmin
Seungmin
…へへ、ありがとうございます ㅎ





「俺がスンミニの一番のファンだから」って言い張るヒョンは時々こうしてストレートに僕を褒めてくれる。

ヒョンからのベタ褒めの言葉は何度聞いても慣れなくて、気恥ずかしい。





ヒョンは仕事もそつなくこなして、メンタルケアも自然で、暖かい人で、

まさに僕の描く理想的な大人像そのもの。



本人には滅多に言わないけど、ヒョンが僕のマネージャーでいてくれる事が凄くありがたい。




Bangchan
Bangchan
あ、そうだ。
スンミナお仕事の話なんだけど
Bangchan
Bangchan
詳しい事は後で話すから、一旦聞いてね

Seungmin
Seungmin
そう言われると
逆に詮索したくなっちゃうけど
Bangchan
Bangchan
だめだめ ᄏᄏᄏ
あんまり深く考えずに答えて欲しいんだ






仕事の話において深く考えないで欲しい事って何?


ってそう質問しようとしたけど、ヒョンの言う通りに一旦話を聞いてみる事にした。




普段なら、さらっと仕事内容を言う人だから何か特別な理由があるんだろうなって察しがつく。





…そう思った途端、ちょっと緊張してきた。

僕これから何言われるはめになるんだろう。




ヒョンは少し言葉に悩むような素振りを見せた後、真っ直ぐに僕の目を見つめた。





Bangchan
Bangchan
今、君に新ドラマの主演オファーが来てる。主題歌も任せたいって話なんだ。

どう?この話受け入れてくれる?

Seungmin
Seungmin
あー…それだけ?
Bangchan
Bangchan
うん。これだけ





歌一筋でやってきた僕にドラマのオファーが来た事は衝撃的な事ではあったけれど…。


ハードルを上げすぎたというか、
緊張させられた割には案外平凡な。



歌手がドラマに出演するなんて珍しい話でも無いし。

何をそんなにヒョンが言葉に悩んでいるのか全く検討がつかない。



Seungmin
Seungmin
ん〜まあ、ドラマの内容にもよるかな
Seungmin
Seungmin
ほら、世界観とか壊したくないしさ
Bangchan
Bangchan
それは後日
Seungmin
Seungmin
…はあ?怪しすぎるでしょ
Seungmin
Seungmin
何か企んで

Bangchan
Bangchan
とにかく!!



僕の声を遮るような大きめの声。

自分でもその声に驚いたのか、周りにいたメイクスタッフさん達にペコペコ頭を下げていた。



Bangchan
Bangchan
今は言えないの…!


今度はちゃんと周囲を見渡してから、僕にしか聞こえないくらいの声量でそう言う。


Bangchan
Bangchan
それにきっとスンミンにとっても悪い話じゃないと思うよ?
Seungmin
Seungmin
…いや、悪い話では無いけどさ



ヒョンの言う通り、今よりももっと世間の人に認知される為にはドラマ出演は絶好のチャンスであるのが事実だ。

僕だって、ドラマに出るのが嫌だとか演技したくないだとかそんな気持ちは一切無い。

ただ、怪しすぎるってだけ。



Bangchan
Bangchan
じゃあ
Seungmin
Seungmin
待って
Seungmin
Seungmin
何で急に僕なの?
演技なんてMV撮影でしかやった事ないし
Bangchan
Bangchan
監督が言うには役のイメージがお前にピッタリなんだって

Seungmin
Seungmin
ヒョンは何でそんな必死なの?
Seungmin
Seungmin
怪し。


そう問い詰めるとまたヒョンは返事に困っているのか口をもごつかせる。


Bangchan
Bangchan
……ただ、えっと
Bangchan
Bangchan
スンミニが俳優やってるの
見てみたいな、って


Bangchan
Bangchan
だからやって!お願い!!
Seungmin
Seungmin
うわ…
Bangchan
Bangchan
やってよ〜!!!!



五歳児の子供が駄々をこねるように僕の手をぶんぶんと振り回す。

チャニヒョンは幼児退行すると面倒だ。
こうなると意地でも僕の言う事を聞かなくなる。



Seungmin
Seungmin
引き受けます!
引き受けますから、正気に戻って…












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