第10話

[2XXX/MM/DD 00:00] >BATTLE
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2025/08/14 01:37 更新
ネオン街の夜景を切り裂くように、高架トラムの無人車両は音もなく滑っていく。
車窓の向こう、街の色は深紅から青紫へと変わり、空気は徐々に人の気配の少ない、キンと澄んだものになっていく。
トラムの中で、RABBIT___初兎ちゃんはずっとあせあせしながら、任務概要を読み上げていた。
RABBIT
発生地点はこの二駅先の廃ビル群のあたりやな。感知パターンは中〜高レベル、外部干渉の痕跡アリ…
RABBIT
ふたりとも、聞いてへんやろ。
WOLFは座席にもたれ、目を閉じたまま返事をしない。
僕はそんな彼らを横目に、窓ガラスに映った自分の目元を整える。
口元の白布のおかげで、表情は読み取られにくいはずだ。
RABBIT
頼むから、ちょっとはやる気を…
WOLF
降りる時に起こして。
RABBIT
だからそういうとこが…
僕は笑いながら、窓に映る彼らの影を指でなぞった。
トラムが静かに停車し、ドアが開くと同時にひんやりとしたフェイズの気配が肌を撫でた。
半分崩れたビルが立ち並ぶ、都会とは思えないほど廃れた場所。
薄汚れた空気と、昔のビル特有の鼻につく匂いが漂っている。
RABBIT
崩れかけのビルが多くて危険や。僕の方法だとフェイズが暴れてビルが崩れるかもしれないから、今回は安全圏で記録しとくな。気をつけて。
相変わらず用心深いなぁ…
FOX
わかった!行こうか、WOLF。
WOLF
うん。
思いの外素直に頷いてくれたのが嬉しくて、足取りが軽くなる。
WOLF
……ちょ、速い…
FOX
あ、ごめん。
…………軽くなりすぎたみたいだ。
しばらく進むと、フェイズの気配は段々と濃くなってくる。
WOLF
北東、800メートル先、5体いる。
いつもつけているヘッドフォンを外した途端にこれだ。
やはり彼の耳は侮れない。
FOX
わかるんだ。すごいね。
WOLF
………自分じゃ、あんまり良い能力だとは思ってないけど…
FOX
まぁ、僕も勘だけで突っ走っちゃうとこあるしなぁ…
軽く言葉を交わしながらWOLFの指示に従ってフェイズを探る。
WOLF
来た。右手方向に3体、左手方向に2体。
すかさず左のフェイズを撃つWOLF。
音もなく、2体のフェイズは崩れ落ちた
FOX
今の何?音が、しなかったけど…
WOLF
無音銃。
そういって彼は得意げに笑った。
WOLF
右手は任せた。俺が引きつける。
FOX
了解。
WOLFが走り回ってフェイズを撹乱し、僕が遠距離銃で残りの3体をまとめて撃ち抜く。
連携を取るつもりなんてなかったのに、気づけば背中合わせで戦っていた。
FOX
ねぇねぇ、
WOLF
…何。
FOX
その銃貸してよ。
WOLF
は、?
銃を受け取り、照準センサを覗く。
神経パターンに直接ロックして、撃つ瞬間に脳信号をほんの一瞬だけ切断する_____そんな精密な仕組み。
FOX
これ、けっこう好きかも。
WOLF
……わかったら返して。
わずかに赤くなった耳が、髪の隙間からちらりと覗いた。

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