ねぇ、じいちゃん
俺、ちゃんと笑えてたかな
〜5歳の頃〜
これが、じいちゃんと悠仁との最後の会話だった
ねぇ、じいちゃん
僕、幸せじゃなくても良かったんだよ
ただ、じいちゃん達と一緒に居て、
じいちゃんと悠仁のそばで
笑っていられれば良かったのに
一緒じゃなくたってもう一度だけ会えれば良かったのに
ただ、それだけで良かったのに
ねぇ、僕、頑張ったんだよ
父さんと母さんに俺じゃなくて
僕でいなさいって言われたから僕になった
泣くんじゃないって言われたから
じいちゃん達が好きだって言ってくれた笑顔にした
嫌いって言われたから
好かれるように頑張った
どんな時でも
じいちゃんと悠仁が好きだって
言ってくれた笑顔だけは絶やさなかった
どんな時だって、
ソレだけは絶やさなかったんだ
僕、いっぱい頑張ったんだよ
もう一度じいちゃんと悠仁に会いたかったから
でもね、なんでだろう?
ちょっとだけ、疲れたんだ
いつだって笑っていたのに
いつ笑っているか分からなくなっちゃったの
じいちゃんは、
泣きたい時は泣けって言ったよね
でもね、もう泣けないの
泣き方が分からないの
ねぇ、じいちゃん
僕が願うのはダメなことだったの?
ただじいちゃんと悠仁といられたら良かったのに
______『人生は不公平だ』
どこかの世界の王サマが、
そう言っていた気がする
本当に、その通りだね
どんなに頑張ったってこの願いは叶わないのかな
ただ、会いたいだけなのに
最後に
もう一度、だけ
ねぇ、王サマ
あなたは王サマになれましたか?
あなたの願いは、叶いましたか?
_______願いが叶うことがなかった少年の独白
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!