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※ちょっと暗いです
誕生日とは、また一つ歳を重ねたことを証明する記念日である。一般的にはプレゼントを贈り、酒を飲んだりケーキを食べたり、楽しく過ごすものだ。一般的には。
もちろん、それが普通だろう。しかし、望んで生まれてこなかった者の「誕生日」とは、忌まわしいもので、ここに居るということを嫌なほど感じられる日だ。
記念なんて言葉を使うべきではない。
ガイア・アルベリヒは、どちらかといえば後者に当てはまる。
実父に捨てられた上に『カーンルイアの最後の希望』と棚に上げられて、モンドとカーンルイアに挟まれるハメになったのだから、無理もない。
しかも運が悪いことにアカツキワイナリーに引き取られた日も、神の目を獲得した日も、ガイアの誕生日だったのだ。
らしくもなく詰め込んだ仕事と心に刻まれた過去を午後の死で一気に流し込む。
そうすれば、余計なことを考えずに済む、いつ何時も忙しい騎士団は、ガイアにとって好都合だった。
ただ一つだけ懸念すべきことがあるとすれば、11月30日のバーテンは必ずディルックということだろうか。
チャールズも承知の上なのだろう。身内というものはやはりそう思い通りに行ってくれない。
普段より一層キツく睨みつけてくる赤の瞳は焼印を入れてくるようで、飾りつけた笑顔も瞬く間に貫通してきそうだった。
無意識だったのだろう、コップを拭きながらそっぽを向くディルックは、随分不機嫌なように見えた。毎年まじめに生日を過ごさない弟に大方呆れているのだ。
決別したとはいえ、大事な弟ということに変わりはない。
アカツキワイナリーに帰ってこれば良いものを、仕事と酒で1日を満たすガイアは、ディルックにとって見るに耐えなかった。
あの日の痛みを飲み込んだディルックと、未だ飲み込めず胃に溜め続けているガイア、すれ違いも甚だしいものだ。
愉快な雰囲気の酒場に反し、2人の間には触れがたい空気が流れている。当たり障りのない言葉と笑顔で話しかけては次々午後の死を頼むガイア。
今日くらいは潰れても許してやろうとは思っていた。
が、そうにもいかなくなってしまった。
減る口数にしたがって増える注文頻度、どうやら今日はよっぽど酒癖がよっぽど悪いようだ。
そう咎めるも返事が返ってこないネイビーブルーの頭。肩を揺らして見ると、微かな吐息だけが耳に入った。
__寝ている。
珍しいこともあるものだ。他人の前では警戒心を全くと言っていいほど解かないガイアが無防備に目の前で寝ている。
しかも起きる気配がない。
よっぽど疲れているのだろう、しかたないとため息をついたディルックは、ガイアを担いで帰ることにした。
朝起きれば必ずびっくりするだろう。ガイアは少しぐらい、いろんな人に愛されていることを自覚した方がいい。
簡単なようで難しく紡がれた言葉は、当の本人の耳に入っていないようだった。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。