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思い返せば、出会った時から一目惚れで
ずっと君の事を考えてた
大粒の涙を流す彼女を
声を掛ける事も慰める事も出来なかった
ただ眺める事しか、今の私には出来なかった
別れたくない
大好きな人を傷つけたくない
でも、それでも私にはこれしか方法が考えられなかった
もう何もかも限界だった
これで全部終わる
きっとこれが正解だった
私を呼ぶ声が、泣きじゃくる声が聞こえてくる
でも振り返れなかった
振り返ったら、この決断が揺らいでしまうから
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夜
コンコン
帰ってくるや否や
制服も着替えず、ベッドに飛び込んでしまった
頭が痛い
頭の中のモヤは、晴れるどころか酷くなっていて
体を動かす気力さえも無かった
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翌日
どこからか漏れた私たちの別れ話で盛り上がる
生徒達を横目に、急ぎ足で教室へと向かう
友人に急かされ、自分の椅子へと座らせられる
見回せばいつの間にかクラスの大半に囲まれていた
うるさい
もう、どうでも良いんだから
どの道、自分が楽になるために恋人を裏切った私に
彼女と再び幸せになって良い権利なんてない
良いんだこれで
もう、これで満足でしょ
誰も関わらないでよ
一限の予鈴が遠くで聞こえる気がする
でも、顔を上げることはなかった
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先生の言葉を皮切りに続々と机に群がり始める
心底気持ち悪い人達だ
きっとこの人達は
自分達がレイを苦しめたなんて
微塵も思っていないんだろう
こう思うと、前の学校の生徒達の方が
まだ救いようがある気がした
もう放っておいてよ
レイがいないなら
傍にいてくれないなら
もう、ここに来る意味なんてないよ
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!