朝、和樹が席に座って本を読んでいると、
1人の男の子が近づいてきた。
「何の本読んでるの?」
そう聞かれた和樹は本を閉じ、手渡した。
「太宰治の人間失格か…。文豪の本をよく読むの?」
その言葉に頷きながら、和樹はノートを取り出した。
『貴方も本を読む?』
「うん。あ、僕の名前は鈴木桜(すずきはる)。桜って呼び捨てでいいよ。よろしくね。」
そう言いながら桜は和樹のノートに
自分の名前を書いた。
『よろしく。僕は佐藤和樹。桜はどんな本を読むの?』
「僕も和樹と同じで文豪の本を読むよ。例えば、夏目漱石のこころや宮沢賢治の雨ニモマケズとかかな。読んだことある?」
『あるよ。文豪以外にもミステリーやサスペンスも好きだな。』
「同じだ。和樹、確か音楽聞くって言ってたよね?何の音楽聞いてるの?」
『邦楽と洋楽をよく聞くよ。』
「へぇ〜、僕は英語分かんないからあんまり聞いたことないな。」
桜は前髪が長く、マスクをしていて表情が分からないが
声で和樹との会話を楽しんでいることが分かる。
和樹は小さい頃から声が出なくなったせいで、
他の人から距離を置かれるようになった。
近づいて来る人はだいたいいじめてくる人だった。
人を見て、実際に関わってみて、
善か悪かを見極めることにした。
(桜はいい人…だと思う。だけど…まだ、分からない。もっと深く、長く桜と関わらないと。簡単には信用できない。)
「あ、もうすぐでチャイム鳴るから自分の席戻るね。また話そう。」
(話せなくなった原因って何だ?というか、ぜんっぜん笑わねぇーな、あいつ。まずは信用してもらわねぇと。)












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。