玄関を開けると、見慣れない靴があった。
(お母さん、また新しい靴買ったのか…。)
「ただいま、お母さん。」
部屋に入ると、煙草と酒の匂いがした。
「お母さん、何かあったのか?」
「ん〜?」
煙草と酒が何本か机に置いてある。
その机には突っ伏して寝ている桜の母、
鈴木琴音(すずきことね)の姿があった。
「お母さん、起きて。」
「…ん?あ、はる〜。おかえり〜。」
「はいはい、ただいま。で、3日間どこで何してたんだ?」
(酔ってるうちに聞いとかねぇーと。)
「ホストの家に行ってて…その時、こんな物貰ったんだ〜。」
琴音はポケットから小さい透明の袋に入った
白い粉のような物を取り出した。
「それ…何?」
「んー、覚醒剤って言ってた。」
「は…?」
「まだ怖くてやってないんだけど…覚悟できたらやってみよーかなって。」
「…使用方法は?」
「んー、確か食物に混ぜて飲むか食べるかしたらいいってナオくんが言ってた〜。」
「酒に混ぜて飲んでみたら?」
「そうしてみようかな〜。」
そう言いながら缶ビールの蓋を開ける。
「もう覚悟決まったのかよ。」
「うん。ものは試し!」
コップにビールを注ぎ、袋に入ってる覚醒剤を
3分の2くらい入れる。
「ねぇ、お母さん。」
「なーに?」
「それ飲む前に聞きたいことがあるんだけど…」
「うん、どうしたの?」
「お父さんのこと、教えて。」












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!