「話せば長くなるけど、お父さん…樹さんと出会ったのは私が19歳、樹さんが24歳の時で__。」
琴音には親から愛された記憶はなく、
いつも孤独を感じる日々を送っていた。
そんな孤独を埋めるため、
高校に入った時からパパ活を始めた。
歳は離れていたけれど、誰かと一緒に食事をしたり
楽しく会話をしたりすることは、
罪悪感を感じると共に幸せを感じられた。
だけど、その幸せは長く続かなかった。
「琴音ちゃんは今日も可愛いね〜♡」
「ありがとうございます!前田さんもかっこいいですよ〜。」
「あはは…ほんと琴音ちゃん、俺のドタイプだな〜♡」
「わぁ〜嬉しい♡」
「今日は今までとは違う所行こっか♡」
「えー?どこだろ〜、楽しみ♡」
「着いた、ここだよ♡」
前田に連れてこられたそこは…ラブホテルだった。
「え?ちょ、前田さん?ここはダメですよ。」
琴音の話を聞かず、前田は腕を引っ張り
無理やり連れて行こうとする。
「いやっ!やめて、誰か助けて!」
琴音の声は通りすがりの人達には聞こえていない
かのように誰もこちらを見る人はいなかった。
(…そっか、自業自得なんだ。私が孤独を埋めるために自分で望んでしてたこと、だから文句は言えない。)
琴音が諦めて体を預けようとした瞬間、
1人の男性が声を掛けてきた。
「その子、まだ未成年に見えますけど?」
「お、お前には関係ないだろ!」
「そうですね、関係ないです。でも、僕人が困ってる所を見ると助けたくなる性格なので、警察呼びました。」
そう言いながら110番が表示されているスマホ画面を
前田に見せつけた。
「…っ!」
前田は血相を変え、走って逃げた。
「あ、あの…助けてくれてありがとうございました。」
「いいよ、全然。それより、大丈夫だった?怖かったでしょ。」
その人はまるで赤子をあやすかのような声色で話す。
こんなに優しくしてくれる人は人生で初めてで、
胸の高鳴りが収まらなかった。
「そ、そんなことよりっ!警察を呼んだって言ってましたよね…?」
「…あぁ!呼んでないよ。」
「なんで…?」
「呼んだら君が困るでしょ?だから!」
そう屈託のない笑顔で言われ、顔が熱くなる。
「あ…もう帰らないと怒られちゃう。君も気をつけて帰るんだよ。」
去ろうとするその人の腕を咄嗟に引っ張る。
「あ、あの!名前、と連絡先…教えてくれませんか?」
「う〜ん、まぁそのくらいなら…。佐藤樹、連絡先は○○○−○○○○−○○○○。」
一生懸命メモをする事値に樹は少々厳しく言った。
「言っとくけど、僕結婚してるから。」
「…お礼をしたいので1度だけ会うことはできませんか?」
「…考えとくね。」
「2日後、連絡しますね。」
琴音が2日後、樹に
土曜日駅前のカフェに来てくれませんか、と連絡すると
少しだけなら、と会うことを許してくれた。
「ごめん、待った?」
「いえ、全然!待ってないです!!」
そう笑顔で答える琴音だったが、
すでにドリンクを2杯も飲んでいた。
「ははっ、それなら良かった。」
笑いながら言う樹に琴音はまた、胸の高鳴りを覚える。
「あ、あのっ、この間は本当にありがとうございました。」
樹は店員にブラックコーヒーを頼んでいるところだった
「いえいえ。えーと、君は…」
「あっ、鈴木琴音です。」
「琴音ちゃんはいつもああいうことしてるの?」
「はい…。でも、そろそろ真面目に生きていかないといけないな…と思いまして。」
「そっか。僕に手伝えることがあればいいんだけど…」
「だ、大丈夫です!お礼をするために今日呼んだだけなのに、またお世話になるとか申し訳ないのでっ!」
「そう…頑張ってね。応援してるよ。」
そう言い、樹はトイレに席を立った。
その隙に琴音は樹のドリンクに睡眠薬を投入した。
薬で眠気に襲われ、判断力が低下している樹を
ホテルまで連れて行き、そのまま一夜を共にした。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!